私は、2002年から2016年まで青森県庁へ勤めていました。2003年に統合失調症になり、精神障がいを抱えながら10年以上県庁にお世話になりました。いま、保護者や学生の間で公務員人気が高まっているそうですが、障がいを負った場合の処遇を考えると、公務員は有力な選択肢の一つと思います。
私自身は、2003年の段階では統合失調症という診断を下されておらず、しばらくはうつ病だと思って生活していました。しかし、2回目に病気休暇を取得した際、統合失調症であると診断されました。
それからだいたい8年間県庁へ勤めましたが、様々な配慮をしていただきました。僕のいた所属がたまたま親切だったのか、全庁的な対応としてそうなっているかはわからないのですが、たとえば人事異動もありませんでした。県庁の人事異動は、2年から4年くらいで職場を変わるのが普通なのですが、私は退職時に在籍していた職場に13年くらいいました。
残業もほとんどすることはなく、仕事量も配慮していただきました。生意気にももっとできると思った時期もありましたが、結局途中で辞職してしまったことを考えると、配慮していただいた仕事量でもいっぱいいっぱいだった、ということができると思います。
お給料の話をすると、病気休暇を取得した年は、昇級はほとんどありません。僕の退職時の月給は約 30万円でした。同期はすでに主査などへ昇格済みで、その分給料も僕よりは高かったと思います。ですが青森県内の企業などで、僕の働きで月額30万円ももらえる職場は、ありません。辞めてから、障がい者雇用を探していて、痛感しました。非常に恵まれた職場であったと思いますが、どうしても体調が回復せずに辞めました。辞職したことに今は後悔はありませんが、障がい者にとって、公務員職場は条件的に非常に恵まれている職場であるということは、間違いないと思います。
そういう意味では、霞ヶ関で大変な思いをして働いている方たちには、申し訳なかったなと思います。働き方改革で、官僚の方々の職務環境が良くなることを、祈っています。
また、青森県庁でも、本庁の勤務になると残業が多いと伺っています。僕は出先機関にしかいたことがないので、体験ではありません。本庁と出先機関の間で、仕事量に差が生じており、忙しいところは本当はもっと人員を補充するべきなのでしょうが、予算の都合もあるのでしょう。人員の追加はほとんど認められていないのではないでしょうか。
基本的には、公務員の働き方改革を考えたとき、単純に人を増やすことが必要なのではないでしょうか。人員をそのままで、仕事を減らすという考え方もありますが、減らしても良い仕事はそれほど多くないでしょう。人を増やさず、仕事も減らさず、働き方を改革する、というのは無理です。どっかでおかしくなって、誰かが割を食う話になると思います。具体的には、定時退庁日にサービス残業をせざるを得なくなる、というようなことです。
僕自身は辞めてから気づきましたが、公務員の職場は障がい者にとっては、とても働きやすいと思います。障がい者枠の国家公務員試験のボーナスステージは、すでに終了してしまいましたが、受験資格がある障がい者の方には、公務員試験はおすすめしたいと思います。
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松橋 倫久
1978年青森県生まれ、元青森県庁職員。東北大学を経て2002年青森県庁に奉職。在職中弘前大学大学院修了。統合失調症を患い2016年同庁退職。現在は求職活動の傍ら、自治体行政のあるべき姿を研究中。
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