成功する人間がする質問は一般人と「ここ」が違う

黒坂岳央(くろさか たけを)です。

ビジネスや学業で大きな成果を出す人と、そうでない人を分ける差はいろいろな要素が絡み合っている。そのため、「成功者はこれが違う」と十把一絡げに一言で断定することは難しい。

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だが、あえて大きな相違点を取り上げるなら「質問力」だと筆者は思っている。「この人は賢いな」「この人は将来、間違いなくうまくいく」そう感じさせる人は、質問の仕方がまったく違うと感じさせられる事が少なくない。本稿ではその根拠を示すとともに、質問力を高めるための思考も取り上げたい。

調べて分かる質問はしない方が良い

筆者は質問は「内面の思考回路」が表面化するものだと考えている。つまり、相手の質問を観察することで、その人の思考力はかなりの程度わかってしまう。

たとえば、手に持っているスマホで調べれば、たちまち数秒間でわかることを質問する人がいる。「この用語ってどういう意味ですか?」といった質問だ。こうした人は思考するという行為の否定に留まらず、質問をされた相手の立場を考えていない。つまり、「ビジネス感覚のない人」と見ることができる。

質問を受けた側には、いい加減な回答を出すわけにはいかないから、質問者のために一生懸命調べて答えを出すことになる。この一連のやり取りの本質は、自分がやりたくないタスクを相手に押し付けているわけだ。王様と家来の関係であればこれでも問題はないだろうが、取引先など対等な立場の場合に、このような態度を取っていては相手から敬遠されてしまうだろう。

顧客から質問が来た時に取るべき対応

だが、このような状況においても「必ずしも質問者が悪い」と言い切れない側面もある。

特にビジネスを仕掛ける側にとっては、顧客から基本的な質問が来てしまう状況は無視できない。複数の相手から似たような質問が来るようなら、顧客が回答を見つけることができない状況が起こっていることを意味する。その場合はFAQを充実させたり、顧客にとってわかりやすいサイトを構成するなど改善の余地があるだろう。

筆者はオンラインで英語多読の勉強法を指導する立場だが、受講生さんから質問が来た場合は積極的に記事や動画、FAQにしてきた。これを続けたことで、質問そのものも減った。受講生さんが自ら答えを発見できるようになったからだ。その結果、サービスの質の向上につながったわけだ。だからお客さんからの質問には敏感でなければ、ビジネスマンは務まらないと考えている。

成功する人は「仮説」を持って質問をする

さて、ここからが本題となる。「成功する人は質問が違う」とは何か?

彼らは質問をする際、必ずと言っていいほど「自分で考えた仮説」を持ってくる。筆者はこれまで、数多くのビジネスのクライアントや、英語教育の受講生と関わりを持ってきた。質問にしっかりとした仮説を持ってくる人の中で、最終的にうまくいかなった人は見たことがなかった。「仮説を持つ」とは、「まずは自分の頭で答えを考える」ということだ。その答えがプロから見て稚拙でも構わない。その時点での自分の知識や経験の中で頑張って答えを出すことそのものに価値がある。そして出した仮説を、プロの目線から良し悪しをフィードバックを受けることで質問者の中に深く入り込むことになる。

実際に、英語多読の受講生から頂いた優れた質問を例に上げると、次のようなものだ。「良質な英文を繰り返し反復リーディングをしています。すでに頭にしっかり入ったページとそうでないページにどうしてもわかれます。記憶がイマイチなページだけ付箋を貼り、付箋の貼ったページだけを短期間に集中的に反復することで、効率的な暗記につながると感じます。このやり方は問題ありませんか?」といった具合である。この方は英語学習法の本質をよく理解されている。その上で、さらに創意工夫を模索する中でたどり着いた素晴らしい仮説といえる。もちろん、自分からの答えは「YES!」である。

良い質問は価値提供になる

また、仮説の伴う質問の素晴らしい点は、他者へも価値の波及効果が期待できる点だ。

上述の例で言えば筆者はこの学習法のコツをYouTube動画にして、他の利用者にも閲覧できるようにナレッジシェアリングをした。結果、他の視聴者からも好評だった。自分一人では思いつかなかったことも、ハイレベルな質問を受けることで「集合知」が機能する。仮説を持った質問は、質問者自身もより具体的な解法を得る回答にもたどり着けるメリットが有る一方で、他者にもポジティブな影響をもたらしてくれるのだ。

誤解のないようにお願いしたいのだが、筆者は「仮説のない質問が悪い」と言っているわけではない。上述の通り、発信者側の情報の出し方がマズければ、ユーザーが回答にたどり着くことができないことも現実的に起こり得る。この場合は、顧客から質問を受けること自体に、改善の余地が残されていることを突きつけられていると認識するべきだ。だが、自分が顧客の立場であるなら、質問をするときにはできるだけ自身の仮説を盛り込んですることによって、質問するという行為そのものが高い生産的をもたらしてくれるだろう。それは自身だけでなく、周囲を巻き込む価値提供になるだろう。

成功する人は、自分で調べることができる範囲は独力で調べ、考える。その上でさらに改善意欲を持って、仮説を立てた質問を出す。そのような高い思考力の持ち主は、いかなる試みであっても最終的には成功裏へと導かれるであろう。

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ビジネスジャーナリスト
シカゴの大学へ留学し会計学を学ぶ。大学卒業後、ブルームバーグLP、セブン&アイ、コカ・コーラボトラーズジャパン勤務を経て独立。フルーツギフトのビジネスに乗り出し、「高級フルーツギフト水菓子 肥後庵」を運営。経営者や医師などエグゼクティブの顧客にも利用されている。本業の傍ら、ビジネスジャーナリストとしても情報発信中。