電動キックボード、普及しそうだけれど

電動キックボードを見たことがある人も増えてきたと思います。キックボードに小さな電動機能がついていて自転車並みのスピードで街中をスイスイ行くことができる代物です。ここバンクーバーでも電動自転車と共にかなり見かけます。

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この電動キックボードが日本では比較的緩い規制でスタートしています。まず、この乗り物が何に当たるのか、なのですが基本は原付です。但し、経産省の産業規制強化法の中の新事業特例制度が適用され、一定のエリアと認可された事業者にはヘルメットなし、免許なしでの利用を可能としました。なぜ、二重基準ができたかと言えば一定条件下ならばこの乗り物が「小型特殊自動車」扱いとなったからです。

小型特殊自動車とは何か、平たく言えば農作業用のトラクターや市場などでのターレット式構内運搬車、小型除雪車といった乗り物を指します。またその場合、最大時速は15キロ(農業用は35キロ)です。その為、一般的エリアで電動キックボードを乗るには原付免許を持ってスピードは時速20キロ制限、経産省の指定エリアで指定業者からレンタルすると小型特殊車扱いで時速15キロというややっこしい状況が生じます。

日本の行政もこうやって例外規定を作っていくことでたかが電動キックボードでも複雑なルールが生まれることになってしまいました。

さて、価格ですが、安いものですと数万円からあり一回の充電で30-50lキロぐらい走れるようですので折りたためて持ち運びしやすいことを考えれば普及する可能性があります。特に通勤の足にする人は増えるかもしれません。

私が懸念する問題はルールです。原付ないし小型特殊車なので歩道は走れません。では一方通行の道路を逆走できるのか、これは案外どこにも書いてありません。原付ならば駄目ですよね。しかし、電動キックボードに乗る人がそこまで注意するか、これは疑問です。また電動ではない通常の足でけるタイプならよくて電動は駄目としてもそれをどう区別するのか、この辺りも気になります。

ちなみに自転車はどうなのか、です。電動アシスト車と電動自転車の違いを知っている人はどれぐらいいるでしょうか?前者はこがないと動きません。後者は勝手に走ります。この違いです。よってアシスト車は免許がいらないのに対して後者は免許がいります。つまり、自走できるかどうかが免許の要不要の境目です。

電動スクーターの普及により個人的には路地などでの出会いがしらの事故が増えるだろうとみています。理由の一つにスマホを見ながらの「ながら運転」と音楽を聴きながらでクルマの音が聞こえないことによる事故でしょう。

近年、日本でママチャリを乗っても必要以上に気をつけなくてはいけない事態になっています。数年前、私も東京でママチャリに乗っていた際に前方に左右にふらふらしながら乗っている高齢の女性の方がいて狭いながらもすっと横を通り抜けた際にガチャンと音がしてその方が転んだのです。多分、そばを通ったことでよけなきゃいけないと思ってハンドルを切り損ねたのでしょう。「大丈夫ですか?」と声をかけたら自分で起き上がり、私は自転車を起こしてあげたら罵声が飛んできました。よくわからないお怒りでしたが、そういうことに巻き込まれるリスクは増えてきています。

その中で車道と歩道が分かれるような道ではなく、普通の裏道では自動車、バイク、自転車、歩行者が割とぎりぎりのところをすり抜けていくのが当たり前。そこに電動スクーターは更なる切り口となり、ややも心配であります。

今後、電動式の乗り物はEVや自転車、今回のスクーターのみならず、応用範囲が広いので多種多様な乗り物が出てくると思います。それを前提にするならば電動スクーターだけ緩和ルールを設定したのは失敗だったと思います。多分、それを普及したい人が政治家にねじ込んでこんなルールを作ったのだと思いますが、経産省はもっと先を読み込みべきだったでしょう。

自由化による市場拡大とルール設定は難しいバランスですが、今回の緩和策は役人らしい拙攻で個人的には時代の流れに乗っていないと思っています。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2021年5月3日の記事より転載させていただきました。

会社経営者
ブルーツリーマネージメント社 社長 
カナダで不動産ビジネスをして25年、不動産や起業実務を踏まえた上で世界の中の日本を考え、書き綴っています。ブログは365日切れ目なく経済、マネー、社会、政治など様々なトピックをズバッと斬っています。分かりやすいブログを目指しています。