人間関係を「減点式」で考える人が必ず破綻する理由

黒坂岳央(くろさか たけを)です。

世の中には、人間関係において「加点式」と「減点式」で考える人にわけることができる。まったくのニュートラル(中立)という人物は例外的であり、程度の差こそあれ、ほとんどの人は相手のいい部分によく気がつくタイプと、悪い部分にフォーカスするタイプに大別できると感じる。

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そして個人的見解を述べるなら、いきすぎた「減点式」で人間関係を考えるクセのある人は、最後は破綻が待っていると思っている。これは減点式で考えてしまう思考が悪いと言っているわけではない。後述するが、これはいわゆる人間の本能的な性質に近いからであり、それ自体を否定するものではない。だが、マイルドにすることは勧めたいと思っている。

相手の悪い面ばかりが見えてしまい、良好な人間関係を維持できずに悩んでいる人は少なくないだろう。そんな人にとって新たなる視点の提供になればと思い、本稿で理由を展開したい。

人間関係における加点式と減点式

さて、人間関係においては、加点式と減点式で思考するタイプにざっくり二分できると述べた。まずはそれぞれの特徴を取り上げたい。

加点式のタイプは、相手のよい部分によく気がつく。相手と接点を持った後、交流を経るごとにドンドン得点が加算されていく。そのため、コミュニケーション機会を重ねるほど、相手のよい面が増えていく一方となり、結果として良質な関係性を構築できる傾向だろう。

その一方、減点式は真逆だ。こちらはとにかく相手の悪い部分によく気がつく。相手と接点を持った瞬間から、コミュニケーションを重ねるに従い、ひたすら減点し続けるイメージである。

以上のように定義した上で、それぞれの理解が促進できるたとえ話をだしたい。同僚が気を利かせて掃除をしてくれたとする。どこの職場でも見られる光景だ。その際、前者のタイプは「この人は率先してみんなのために動くなんていい人だ」とその行いに感謝する。他方において後者のタイプは「部屋のスミのゴミが取り切れていない。大ざっぱでいい加減な性格だな」と同じ行いの中から、ネガティブなポイントを拾い上げるだろう。

減点式のタイプは悪人ではない

ここまでの話を聞くと、まるで減点式のタイプはアラ探しが得意で、面倒くさい性格を有する人物と感じられたかもしれない。だが、筆者は減点式のタイプも悪人ではないし、多種多様な人間の性質の1つと考えるべきだと思っている。悪く言えばアラ探しだが、よく言えば慎重な人物とも言えるからだ。

なぜ、筆者はこれを人間の性質の一環であると評するのか?その理由をお話したい。悪い部分だけをフォーカスしてしまう理由は、ネガティビティバイアス(Negativity Bias)という心理学で説明がつきそうだ。シカゴ大学で行われたネガティビティバイアスにおける実験においては、人間の脳の性質としてポジティブより、ネガティブに強く反応することが明らかになっている。その本質的理由は、有史以来我々のDNAに連綿と受け継がれてきた、人間が自分の身を守るための機能と考えられるだろう。

太古において未知のキノコを発見した際、「きっとおいしいはず」とオーバーポジティブな人は毒キノコを食べて命を落としてしまうリスクを抱える。だが、ネガティブな人は「未知のキノコなんて危険だ」と回避する。幾星霜を経ることで、未知の対象に慎重な姿勢を持つ人が淘汰されず、現代に遺伝子を残してきたのではないだろうか。

人間関係は人生にプラスにも、そしてマイナスにも大きく作用しうるファクターだ。良い出会いは人生を極めてポジティブに好転させるが、その逆もありえる。そんな影響度の高い人間関係の構築する上で、ネガティビティバイアスが働くのは、人間の本能的な当然といえる結果と言えるのではないだろうか。

減点式にするとすべての人は0点である

だが、何事もいきすぎは毒になる。つまり、あまりに減点式に傾倒する人物の行く先は、一切の人間関係が構築できない究極の孤独が待ち受けているのだ。

筆者はかつて、それに該当するような人物に出会ったことがある。ある有名人のファンだといっていた男性の口癖は「でも」であった。有名人の高い能力を絶賛しつつも、「でもあの人は性格が良くない」とか「何かと粗がある」とか「口癖が耳障り」など、1つを褒めれば、必ず3つはけなすという具合であった。本当にファンなのか疑わしくなってしまうが、「いや、別にすごい悪い人と言っているわけではないよ」などと返ってくるからますますわからなくなる。

そしてこの男性の人間関係構築術は、あらゆる場面で発揮された。教師や市販のテキストにもケチを付け続け、職場の上司や友達など「これはダメ」「あれは気に入らない」と言い続けていたのだ。さすがにこれはと思い、やんわりと指摘したことがあったが過剰に反応されてしまい、距離を取られてしまった。その人物は今は仕事もやめ、誰とも会わずにひっそりと自宅で過ごしていると人伝いに聞いている。

減点式で人を見る人が悪とは考えない。だが、いきすぎは推奨されない。減点式原理主義者にかかると、すべての人間は0点になるからだ。完璧な人間は世の中に一人たりとも存在しない。究極の孤独を望むなら止めはしないが、本人がそのような状態を望んでいるかは留意する必要があるだろう。

プラスマイナス→プラスならいいのでは?

人の好みは様々であるため、その人のプラスはある人からはマイナスになるし、その逆も然りだ。結局、すべての人はプラスもマイナスの要素も等しく有している。誰しも欠点はあるのだから、究極的にはその人にとってプラスが大きいなら人間関係を持つのがアリだと考えている。その逆に付き合ってマイナス面の方が大きいなら、距離を取るのが解だろう。

色々と述べてきたが、減点式のタイプの人も他人から見れば100点満点ではないのだから、相手を評する際にはネガティビティバイアスをややマイルドにする意識を持つことで、良好な人間関係の構築につながるのではないだろうか。

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ビジネスジャーナリスト
シカゴの大学へ留学し会計学を学ぶ。大学卒業後、ブルームバーグLP、セブン&アイ、コカ・コーラボトラーズジャパン勤務を経て独立。フルーツギフトのビジネスに乗り出し、「高級フルーツギフト水菓子 肥後庵」を運営。経営者や医師などエグゼクティブの顧客にも利用されている。本業の傍ら、ビジネスジャーナリストとしても情報発信中。