日本の上場企業のサラリーマン社長は「割に合わない」

日本経済新聞に日本の上場企業の社長の報酬ランキングが掲載されていました(図表も同紙から)。(画像をブログでみる

このデータでは、日本には年収1億円以上の上場企業の社長が、わずか296人しかいないとされています。しかも、この中にはオーナー経営者も含まれています。つまり、多くの上場企業のサラリーマン社長は、1億円以下の報酬で働いているのです。

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アメリカでは、ダウ工業株30種平均採用の企業の経営者の平均報酬が23億5000万円で、日本の16倍という計算になっていました。

ただし、アメリカの経営者と日本の経営者は、クオリティーが違います。

アメリカの経営者は、企業価値の最大化のために働く「プロ経営者」です。自らも株式によるインセンティブがあり、報酬の仕組みも違います。

これに対し、日本のサラリーマン経営者のほとんどは、従業員として新入社員で入社し、社内の出世競争で社長に上り詰めた人です。必ずしも経営のプロとは言えません。

そう考えれば、アメリカの経営者と日本の経営者を単純比較するのは適切ではありません。

日本のサラリーマン経営者は、社内の激烈な出世競争に勝ち残り、社長まで上り詰めた社内の成功者です、にも関わらず、年収は多くの場合、1億円もいかない。しかも、数年経てば交代してしまい、それで経営者人生は終わりです。

年収1億円は確かに高額ですが、所得税率を考えれば、報われているようには見えません。一方で上場企業のトップとして極めて重い責任を負わされるのは「割に合わない」ように思えます。

私の周りには、上場していない会社のオーナー社長がたくさんいます。社員数も少なく、売り上げや事業規模は上場企業より小さいかもしれませんが、上場企業の社長より年収の多い人たちが当たり前のように存在します。彼らには学歴は関係なく、ビジネスを如何に立ち上げ軌道に乗せるかだけが問われます。

しかも、オーナー経営者として、社内力学のような面倒なこともなく、自分の思う通りに仕事ができ、ストレスもあまり感じていません。交際費などの裁量も大きく、経済的にも精神的にもサラリーマン経営者より恵まれているように見えます。

もちろん、オーナー経営者にはサラリーマン経営者とは異なる責任とリスクがあります。個別の事情もあり、単純に比較するのは無謀なことかもしれません。

ただ明らかな事は、日本社会も有名大学を出て一流企業に入り、社内で昇格することだけが成功モデルという時代は終わったということです。

経営のプロフェッショナルとして、アメリカの経営者のような「プロ経営者」の道を目指す。あるいは、オーナー経営者として自由な裁量を持って仕事をする。このような仕事のやり方の方が「割に合う」と思う人が、日本でもこれから益々増えていくはずです。


編集部より:このブログは「内藤忍の公式ブログ」2021年6月28日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。

資産デザイン研究所社長
1964年生まれ。東京大学経済学部卒業後、住友信託銀行に入社。1999年に株式会社マネックス(現マネックス証券株式会社)の創業に参加。同社は、東証一部上場企業となる。その後、マネックス・オルタナティブ・インベストメンツ株式会社代表取締役社長、株式会社マネックス・ユニバーシティ代表取締役社長を経て、2011年クレディ・スイス証券プライベート・バンキング本部ディレクターに就任。2013年、株式会社資産デザイン研究所設立。代表取締役社長に就任。一般社団法人海外資産運用教育協会設立。代表理事に就任。