上場企業は、事業遂行にとって必要な資産だけを保有すべきである。本業との関連が薄い子会社株式、政策保有の株式、使途の明確でない多額の現金、事業目的に関係の希薄な不動産等については、不要不急の資産といわれても仕方ない。
現在では、不要不急の資産はおろか、事業に欠くことのできない資産すら保有しないでも経営できる。片仮名でいえば、アセットライトという経営戦略だが、例えば、航空会社を経営するのに飛行機を保有する必要などなく、実際、LCCの多くは飛行機を所有しないでリースを利用している。
資産を保有すれば、資産の劣化や陳腐化のリスクは、企業が負担する。オペレーティングリースを利用すれば、そのリスクはリース会社に移転し、さらに、レンタルにすれば、資産の稼働率のリスクもレンタル会社に移転させることができる。実質的な金融費用は増加するが、費用とリスクとの間の最適化を志向して、空運業等の幅広い分野で、リース等の利用が拡大しているわけである。
逆に、金融の立場からみても、LCCがいい例だが、世界に多数あるLCC全体としては成長していても、過酷な競争のなかで個社の破綻確率は決して低くはないのであって、リスク管理の観点からは、融資は難しい場合が多く、リースが好まれているという現実がある。
量的成長機会が失われつつあり、構造転換や革新に成長機会を求めるほかなくなっている現代において、金融機能も大きく変わる必要があるのだ。例えば、シェアリング経済の進展は物品の社会的保有を合理化していくが、それは直ちに物品の量の削減につながり、生産量の減少は製造設備の減少につながることで、その保有に要する資金需要を減退させる。
しかし、量的縮小を質的成長につなげることができる。この量から質への転換こそ、まさに、現在の金融に求められていることである。例えば、LCC向けの融資がなくなっても、その分、リース会社向けの融資が伸びれば、それでいいのである。
森本 紀行
HCアセットマネジメント株式会社 代表取締役社長
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