「われわれはこの選挙に2度勝った。3回目も勝利しなければならないかもしれない」
大統領退任後に初めて行われた26日の集会でも相変わらずトランプ節は全開だった。集会では持論である2020年の大統領選で不正により自分は負けたという主張を繰り返し、(自身の弁護士を務めたパウエル氏が全くの嘘だと弁明しているのにもかかわらず)自身の十八番である反移民、国境警備の強化を打ち出し、メキシコとの国境で増加している移民に苦慮しているバイデン政権を攻撃した。
ちなみに、筆者の知る限りではトランプ氏の不法移民に対する強固な姿勢は大統領のなる前の2014年にCPACに登場した頃から確認できる。また、自身の弾劾訴追を指示した議員の名前をあげながら、次回の予備選ではそれらの議員の対抗馬を支持することも表明。それは、オハイオ州での集会は同州選出のゴンザレス氏の対抗馬として自身の側近だったミラー氏の支持集めを手助けをするという意味もあった。それと同時に来秋に実施される中間選挙、2024年の大統領選に向けて自身の影響力を保持しておくという戦略の一つとして今回の集会が位置付けられているという意見もある。彼の真意は直接聞かなければ分からないが、外野からは今回の集会は大統領に再選するためのファーストステップだと目されている。
しかし実際のところ、このまま大統領選に再出馬の方向に向かうのかはまだ分からない。巷で言われているように彼は目立ちたいだけで、再び大統領という非難の的となり割に合わない職に付きたくないのかもしれない。はたまた、先般、進展しているトランプ氏訴追の動きが実質化して、起訴、裁判に発展し、選挙どころではなくなるのかもしれない。現実は刻一刻と動いていくし、未来予測など一寸先が闇の政治の世界ではご法度である。
だが、そんな不確かな情勢の中でも確かなことは存在する。それはトランプ氏は我々の期待と予想を覆してきたことであり、以前として共和党内で最も影響力がある人物であるということである。
何度も聞いた「トランプは終わった」
我々は何度同じ間違いを繰り返すのか。彼が最初に共和党の大統領候補として出馬した時、共和党の予備選を戦っていた時(彼が共和党の候補になったのにもかかわらず、外務省は彼の当選の可能性は全くないとしていたのは有名な話だ)、大統領選の終盤で性的発言が発覚した時(今では考えられないが、この時共和党の連邦議員の約半分が彼を非難し、後に忠実な側近となったペンス副大統領も例外ではなかった)、二度の弾劾裁判、そして、議会襲撃事件の教唆。彼が政界に足を踏み入れてから、幾度となく叩かれ、そのたびに彼の政治生命が断たれたと言われ続けてきた。しかし、実際はそうならなかったし、様々なスキャンダルに見舞われながらも、支持率に多少の下落はあるが、大幅な急降下は見られなかった。これからも同じ現象は続くであろう。
そして、彼が政治家としてある意味で生き長らえているのは、熱狂的な支持者の存在である。上記で述べたように様々なスキャンダルや不祥事に襲われても、トランプ氏はどんなに低くても34%ほどの岩盤支持層に支えられていた。そして、4年の任期を通じて新たな支持者の掘り起こしに成功し、バイデン氏は約700万票もの得票数の差はあったもののアリゾナ、ジョージア、ウィスコンシンなどで4万票ほどの票が動いていれば、選挙人の数でバイデン氏を上回り、トランプ氏は再選を手にしていた。2024年の選挙戦略次第では、仮に得票数で1000万票差を対抗馬に付けられていても勝利する道がトランプ氏にはある。議会事件がどれほどの影響を有権者に与えたかは今の時点では確証はもてないが、少なくとも共和党内での影響力は揺らがない。
SNSからトランプ氏は除外されても彼の影響力は健在だし、過去と同様にそれを過小評価してしまうと思わぬ副作用があるのかもしれない。トランプ氏の過小評価は禁物である。