職場で読書や勉強をすると反感を買う深い理由

黒坂岳央(くろさか たけを)です。

従来から、「日本人は社会に出ると勉強をしなくなる」と言われてきた。リクルートワークス研究所の2021年7月5日に発表した調査によると、コロナ禍でますますその状況が悪化したことが明らかになっている。

世界が大きく変化し、加速する中で勉強の必要性がますます高まっている。そんな只中にあって、一部の企業では「職場で勉強や読書をする行為」をよく思わない人物が存在するという。勉強家はこの圧力に屈してはならないし、反感を覚える側の人は自身の不勉強を自覚した方が良いと感じ、本稿を展開したい。

Nutthaseth Vanchaichana/iStock

 

職場で読書や勉強をすると反感を買う?

先日、以下のツイートが話題になった。

瞬く間に反響を呼び、同じような体験談を持つ人から意見が寄せられた。「職場で勉強をしていると、転職準備をしていると見なされる。かつて、奴隷が文字を覚えるさまを見て脅威を感じたのと同じ構図」と鋭い分析も見られた。

筆者も同じような体験を何度もしたことがある。職場の休憩中に読書をしていると、「昼休みの読書をよく思わない人がいるからやめなさい」と言われたことや、英字新聞を読んでいると「自分は英語ができます、という自慢は相手から反感を買う」と注意をされたことがある。また、仕事でミスをした時に「いつも注意しようと思っていたけど、読書をしても仕事はできるようにならないからね」と恨み節で言われたことがある。

自己・他者の体験談を分析するに、この反感は「大多数の人は勉強していないのだから、あなたも同じ振る舞いをしなさい」という同調圧力から来ているのだろう。職場における勉強は、勤務先での反乱分子扱いされてしまう。この仮説が正しいとするなら、日本の文化的側面が大きいと見ている。

この対処法は「無視」である。筆者は無視して勉強を続けた。その内、諦められて注意を受けなくなった。

職場の休憩時間は勉強をして過ごすことを勧めたい

職場の休憩時間の過ごし方は自由だ。同僚とおしゃべりをしても良いし、スマホをいじって過ごしてもいい。だが、あえて筆者から勧めたい時間の使い方を紹介するなら「勉強」である。その合理的理由を解説したい。

多くの場合、勉強は長期的に取り組む活動だ。たとえば、英語力を身に着けたくて勉強をするなら、その期間は1年、2年間と長期的に及ぶことが多い。長期的にコツコツ学習を継続するには、「毎日同じ時間にやる」が効果的だ。職場の休憩時間は、会社に出勤すれば必ずある。それも同じような時間帯に、同じ時間の長さで取得できる。それ故に一度、勉強の習慣を作ってしまえば継続しやすい。

筆者は会社員時代、休憩時間は英語や会計の勉強にあてていた。ちりも積もれば山となるという言葉があるように、積み重ねた休憩中の勉強で膨大な量の知識を蓄えることができたと思っている。漫然とスマホを見て過ごすか?それとも勉強をして過ごすか?一年後、二年後には両者にとてつもない差がついているだろう。

勉強の必要性を知らない恐ろしさ

無視できない数の人が「能力の格差は生まれ持った才能や若さで決まる」と思い込んでいる。確かに才能がなければ手も足も出ない分野は存在する。高等数学や高度な物理学の一部の領域においては、「努力すれば誰でもできる」とは言い難いだろう。しかし、自分の仕事の専門性を磨いたり、英語力をつけるということに才能は必要がない。役に立ってくれるスキルのほとんどは、後天的に学習する知識や技術が大部分を占めることになるからだ。

アイザック・ニュートンは「巨人の肩の上に立つ矮人」という言葉を残している。先人の知恵を巨人に見立てて、知識を活用することの有利さを解く言葉だ。我々はGoogleの天才的エンジニア集団が開発した、アルゴリズムをゼロから作ることは困難である。だが知識さえあれば、そのアルゴリズムを道具として活用することは誰にでもできる。世界を大きく変える画期的な発明などできない我々こそ、勉強をして先人の知恵を活用する力を得ることの意義があるといえるだろう。

職場で他人が勉強に勤しむ様子に、脅威と嫉妬を覚えて止めさせようとする人たちは「勉強の必要性」を知らない人たちだ。これは無知から来ているのだろうか?…否、潜在的にその有用性をなんとなく理解しているからこそ、同僚に出し抜かれる恐怖でこのような愚行に走るのかもしれない。いずれにせよ、身近な人間が勉強をしている様子を見て、反感を覚える人に呼びかけたい。脳内から発せられる警告のシグナルを、不勉強な自分自身に向けられるべき時が来ている、と。

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