私は一般従業員として地方の個人経営らーめん店に勤務する者(30代男性)です。そういった立場から見る昨年来のコロナ禍及び政府による対策について思うところを書きます。
まず当店は昨年春先の新型コロナ感染症拡大以降来客数(“売り上げ”が適切かもしれませんが、らーめん屋の場合は客単価はほぼ決まっているのでお客さんの“数”を重要視しています)が激減しそれが今も戻りきらない状況となっており、飲食業界全体も同様であると認識しています。大変であるのは来客数の減少だけでなく、もともとの食品衛生上の対策の上にコロナ感染用の対策もしなくてはならず追加のコストや労力がかかるのです。従来よりお金も時間も掛けているのに来客数は減っている、これが現状です。実に辛い。
ただ来客数の推移は一様に減っているわけではなく、大雑把に見ると感染者数の推移と逆相関の関係となっているところが興味深いところです。緊急事態宣言が出された付近の減り方は酷いもので、GoToトラベルとかやってるあたりは結構よかったです。分かり易いくらいに人々のマインド次第。飲食はもともと世間のマインドが重要なのは分かってはいたのですが強く再認識させられました。
私はこのコロナ禍に対して昨年来ずっと疑問があります。それは実際の被害の程度とそれに対する反応(主に政府、マスコミ)に随分ギャップがありはしないか? 反応があまりに過剰ではないか? という事です。
新型コロナウイルス感染拡大以来一年を経た時点での国内死亡者数は約10,000人でした。亡くなった方にはご冥福をお祈りいたします。しかし、近年では国内で年間に様々な要因で1,300,000人を超える方々が亡くなっています。ましてコロナウイルスで亡くなった方の多くは基礎疾患があるとか、高齢であるなどです。人生において単独の要因によって年間で10,000人が亡くなる程のリスクは十分に許容できるもののはずです。であるのにマスコミはひたすら意味が薄くともインパクトのある数字を取りだしてきて騒ぎ続け、政府は科学的な観点を無視して過剰に規制をし続ける。そのせいで人々のマインドは沈滞し続けるからうちの店に来てくれるお客さんも少ないままなんですよ。何してくれるんですか。
もちろん苦しいのは当店だけじゃなく多くの業種で厳しく、コロナ不況などとも言われています。しかし、感染拡大初期のころはともかく、今まで続いているのは政府による失態でしょう。官製不況と言っていい。もともと効果の程が疑わしい人流抑制や飲食店に対する業態無視の一律時短営業を、その効果の検証もせずに(少なくとも公式に詳細の説明がない)緊急事態宣言やまん延防止等重点措置を、何とかの一つ覚えのように繰り返す。人が出歩くことそれ自体に感染拡大の要因なんて無いでしょう。営業時間の短縮にいたっては密になり易い時間ができて逆効果ですらあったと思います。ただの不況の要因でしかない。さらに言えば過去の緊急事態宣言は病床使用率の逼迫の為に出されたと認識していますが、病床さえ増やしていれば出さなくてよかったはずです。昨年安倍元首相が増やすって言ったじゃないですか。医療業界が非協力だったからとか法律的に強制できないとか色々あるようですが、成果として増やせなかったのは政府及び各自治体の失態としか言いようがない。時間は十分にあったでしょう。政治家達はちゃんと仕事していたのでしょうか? やってる感じを出しているだけで本心からの危機感が足りてないのでは? そういえば夏のボーナスが満額支給されたみたいですね。どんな成果出したのか知らないですけどよかったですね。
政府にはちゃんと科学的な観点をもとに対策を取っていただきたいと要望します。科学的にものを見るとは、対象が未知のものであっても、まずはよく観察し、特徴をとらえ、既知で類似のものと比較し、その類似点からその影響を推測して対応する、上手くいった部分の推測は正しい事とみて未知のものを段々と既知に塗り替えていく、この一連の流れが科学的なものの見方なはずです。
新型コロナウイルスについては“コロナウイルス”の時点である程度は既知の部分がある。ましてこの一年以上経た中で相当の知見は溜まっているはずです。もう未知のウイルスではない。対策もそれに合わせて改善していくべきでしょう。政府はちゃんと対策を科学的に考えて感染が起こるその場面に効くように改善させて我々に啓蒙してください。余計な対策はなるべく削る。例えば、外出時にずっとマスクしているのは無駄でしょう。本当に必要なのは喋る、咳、くしゃみの瞬間だけのはずです。なので「マスクは携行して必要な時のみつけましょう」と啓蒙した方がいい。はっきり言ってどこでも誰でも皆マスクをしている光景は異常です。そりゃマインドも高揚するわけがない。考えてみてください。外に出てほとんどの人がマスクをしていない。これだけで相当マインドは戻ります。コロナ不況に一番有効なのはマインドの正常化です。将来のつけを増やして必要以上にお金をばら撒くことではないと考えます。
私はこの異常なコロナ禍において誰がどういう事を言い、やってきたかをよく見て覚えておこうと思っています。色々な事が見えてきましたが、強く感じたのは「人は自分に影響の及ばないところをスケープゴートにする」という事です。政治家はその代表だと見えてしまいます。彼らは自分たちの対策の稚拙さ(一年経っても対策の中身に改善が無いのは実に稚拙)を棚に上げて新型コロナの感染リスクが高いからと私達飲食業界に一律の規制を強いる。なのにそのリスクの高い場で働き、感染のハブになり易いはずの私達にワクチンは優先しない。優先したのは医療業界のみでした。私もらーめん屋は優先する必要はないと思いますが居酒屋や所謂夜のお店などはした方がいいでしょう。コロナ対応している医療従事者などは優先した方がいいとは思いますが薬剤師はしなくてよかったのではないでしょうか。結局政治力がものを言ったのかなと感じます。「人は自分に影響の及ばないところをスケープゴートにする」、これは人の本質かと思います。しかし政治家の方々にはその立場上そうであってほしくなかった。少なくとも負担を強いるなら論理的な根拠を示していただきたかった。とても残念です。
余談ですが、らーめん屋は厨房内がただでさえ暑いのでマスクは本当に辛いのです。早くなくしたい! でも日本の場合マスクは強制されているわけではないから誰にもなくす権限はないのですよね。これは困った。ところで、「マスクの原料って石油なんですよね。意外にこれ知られていないですけど」って言って適切な時期にマスク禁止にしてくれたら、ほんのちょっとだけあの環境相でも個人的には評価したいと思います。
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柳澤 真
らーめん店社員(個人経営店)。男性(37歳・独身)。長野県在住。
工業高専卒・国立大経済学部卒。
大手飲食チェーン、太陽光発電システム販売会社、住宅設備工事会社、食品製造工場勤務を経て現職。
編集部より:この記事は投稿募集のテーマで寄せられた記事です。アゴラでは、さまざまな立場の皆さまからのご意見を募集します。原稿は、アゴラ編集部(agorajapan@gmail.com)にお送りください。