コロナを5類に格下げして「共存」すべきだ

池田 信夫

コロナの感染者数が1日1万人を超えて「史上最多」になったと騒がれているが、図のように日本の感染率は10万人あたり1日5人で、G7では最少レベルである。感染率が日本の9倍にのぼるイギリスは、規制を解除することを決めた。

コロナ新規感染者数(FT.com)

デルタ株の感染率は高いが、重症化率は低い。東京では27日の重症者は4人、死者は2人。累計の重症者も82人で、人工呼吸器の使用率は28%。人口1400万人の都市で、医療が逼迫する状況ではない。

人工呼吸器の利用状況(ECMOネット)

過剰規制がコロナ受け入れ拒否を生む

問題は1年前から指摘されているように、医療資源の配分があまりにも非効率だということである。人口あたり病床数は世界一なのだから、コロナ患者を大病院に集め、その他の患者を中小病院に移送すればいい。軽症の患者は自宅療養で十分だ。他の病気はそうしている。

これは(私を含めて)多くの人が昨年から提言してきたことで、改めるチャンスは何度もあった。昨年、安倍首相が退陣するとき、コロナを感染症法の2類相当に指定するのをやめることを示唆したが、菅首相はそれを撤回してしまった。

感染症法の改正でも、行政が病院に患者受け入れを「命令」できるよう改正する案が医師会の圧力でつぶされ、「勧告」できるだけになった。

今年1月に指定感染症の指定を変更するときも、実質的に同じ「新型インフル等感染症」に指定したため、全員検査や入院義務などの規制は変わらず、病院に重い経営負担がかかる。これが中小病院がコロナをきらう原因である。

持続可能な医療態勢を

データでも明らかなように、今やコロナは、感染率は高いが致死率の低いインフルエンザ並みの風邪である。むしろピーク時には週200万人以上が感染し、年間1万人以上が死亡したインフルのほうが危険な感染症である。

インフルの患者数(国立感染症研究所)

こういう批判に対して「厚労省が政令で規制を緩和すればいい」という反論があるが、実際には保健所が責任をとりたくないので、病院を厳格に規制し、負担が軽減されない。

根本的な問題は、このような古い医療業界の体質を温存したまま、厚労省の裁量的な規制で乗り切ろうとしてきたことだ。コロナを5類に格下げして医療負担を軽減すべきだ。

ワクチン接種は急ぐべきだが、根本的な解決にはならない。好むと好まざるとにかかわらず、われわれは今後もコロナと共存していかなければならないのだから、いつまでも緊急事態と騒ぐのではなく、持続可能な医療態勢に変える必要がある。