アフガニスタンの出来事は「明日は我が身」と考える

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アフガニスタンの首都カブールが想定以上のスピードでタリバーンに制圧されました。外国人の撤収が急加速するのと同時に、空港にはアフガニスタン人が詰めかけて、大混乱になっているようです(写真をブログで見る)。

カブールのハミド・カルザイ国際空港を発着する民間航空便は全便欠航となっており、アフガニスタン人の出国は事実上不可能です。離陸する軍用機にしがみついて、落下する映像もあって、国内に取り残されることへの恐怖感が強いことがわかります。

また、アフガニスタンの通貨アフガニも米ドルに対して最安値まで下落し、多くの市民が現地通貨を米ドルに交換するために金融機関に殺到しているとも報じられています。

安定した生活と財産を失い、恐怖に怯えながら将来に希望が見えないアフガニスタンの人たちの心中を想像すると、本当に心が痛みます。

想定外の出来事が想定外のスピードで起こったという点では、2011年の東日本大震災や昨年からの新型コロナウイルスの感染拡大も同じです。今後も、日本においてアフガニスタンと同様に、現状では想定できないような事態が、極めて短期間に発生する可能性は充分に考えられます。

例えば、隣国との軍事衝突など有事の発生、地震や火山の噴火による大規模な自然災害。あるいは、経済の混乱による急激なインフレ、自国通貨の下落、さらに株式市場の暴落。海外渡航の制限や、国外への財産持ち出しの制限。まさか、あり得ないと思っていることばかりですが、実際に起こりえないと思ったことが次々現実化しています。

アフガニスタンの出来事は平和ボケしている日本人にとっては、対岸の火事のような別世界の出来事に見えるかもしれませんが、「他人事」ではなく「明日は我が身」なのです。

常に「最善を望みながら、最悪を覚悟する」というスタンスで、自分にとってのワーストシナリオを想定しながら対策を考えておく。アフガニスタンから貴重な教訓を教えてもらうことができたと捉えるべきです。


編集部より:このブログは「内藤忍の公式ブログ」2021年8月19日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。

資産デザイン研究所社長
1964年生まれ。東京大学経済学部卒業後、住友信託銀行に入社。1999年に株式会社マネックス(現マネックス証券株式会社)の創業に参加。同社は、東証一部上場企業となる。その後、マネックス・オルタナティブ・インベストメンツ株式会社代表取締役社長、株式会社マネックス・ユニバーシティ代表取締役社長を経て、2011年クレディ・スイス証券プライベート・バンキング本部ディレクターに就任。2013年、株式会社資産デザイン研究所設立。代表取締役社長に就任。一般社団法人海外資産運用教育協会設立。代表理事に就任。