リスクを恐れてメール送信しない不思議な金融機関

日本社会の生産性の低さをもたらしている要因の1つは、印鑑、電話、ファックスといった「昭和なビジネス慣習」が未だに残っていることだと思っています。

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ファックスでしか受付をしないクレジットカード会社の不思議な対応をこちらのブログに書きましたが、書類への必要の無い押印の依頼も、未だに続いています。

例えば、取引先に請求書を送る場合です。印鑑不要でメールで請求書を添付して送れば良いという会社は稀で、多くの会社は未だに押印された請求書の原本を郵送するか、押印した請求書をPDFにしてメール添付でしか対応してくれません。印鑑と言っても、実印である必要はなく、いわゆる認印として使われているだけです。

銀行の届出印や、印鑑証明を添付した上での実印の押印が必要な場合は、効率性の問題はあるにせよ、印鑑の存在価値はまだ残っています。しかし、それ以外の場合は印鑑は無くても問題はありません。単に慣習として残っているだけです。

また、金融機関によっては、メールでのやり取りができないという対応をしているところもありました。メールの誤送信によって顧客データが流出したり、社員による情報漏洩事故が起きることを恐れているのだと思いますが、メールで連絡をお願いしても毎回電話をかけてくるのには閉口します。

メールにはリスクがあるのは理解できます。しかし、だからと言って銀行側からの送信を制限して、別の方法でコンタクトするというのは、何か間違えているように思います。

以前取引のあった別の金融機関では、担当者がLINEを使って連絡してきていました。メールだと社内のコンプライアンスが厳しいからという理由ですが、これまた本末転倒の対応です。

今月は不動産取引の決済が2件あり、その準備を金融機関を進めていますが、対応に何だかちょっと疲れました。さらに決済日当日も大量の押印作業があるかと思うと、今から少し憂鬱な気分です。


編集部より:このブログは「内藤忍の公式ブログ」2021年9月5日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。

資産デザイン研究所社長
1964年生まれ。東京大学経済学部卒業後、住友信託銀行に入社。1999年に株式会社マネックス(現マネックス証券株式会社)の創業に参加。同社は、東証一部上場企業となる。その後、マネックス・オルタナティブ・インベストメンツ株式会社代表取締役社長、株式会社マネックス・ユニバーシティ代表取締役社長を経て、2011年クレディ・スイス証券プライベート・バンキング本部ディレクターに就任。2013年、株式会社資産デザイン研究所設立。代表取締役社長に就任。一般社団法人海外資産運用教育協会設立。代表理事に就任。