プッチェモン元州知事は独立後のロシアからの支援確保に動いた
カタルーニャの独立を執拗に目指しているカルレス・プッチェモン元州知事は逃亡先のベルギーから彼が信頼を寄せているジュセップ・リュイス・アライ氏を仲介させてロシアと接触していたことが「エル・ムンド」を始め9月3日付の数紙で取り上げられた。
勿論、プッチェモン氏はメディアが取り上げた内容を全面的に否定している。
ロシアとの接触が明らかになったのは、今年6月にスペイン治安警察が彼らの違法行為に関係した調査報告をバルセロナの法廷に提出していたことをメディアが突き止めたからであった。
これまでカタルーニャの独立に絡んで公的資金の横領に関係していると思われる人物の電話盗聴を治安警察が行っていた。その中の二人の人物プッチェモン元州知事とアライ氏との電話交信の盗聴から前者が後者に指示してロシアと接触していたことが判明したものだ。
アライ氏はプッチェモン氏が州知事だった時に州政府閣僚の首長を務めていた人物で、プッチェモン氏がベルギーに逃亡して彼らが「亡命政府」と呼んでいるところでもアライ氏はその運営を任されている。そのような関係からアライ氏が2019年春にモスクワを訪問して以来、数度訪問を繰り替えしてカタルーニャの独立の為の政治的支援を要請していた。
スペイン国籍取得を却下されたロシア人が仲介者として動いた
この訪問を容易にしたのはドゥミトゥレンコという人物だ。この人物は17年前からカタルーニャに在住している企業家だ。彼の夫人がカタラン人というのを利用してスペイン国籍を取得しようと努めたが、ロシアの諜報機関と関係をもっているということでスペイン法務省は彼への国籍付与を却下した。その一方で、ドゥミトゥレンコ氏はカタルーニャ商工会議所の在モスクワ大使に任命されてカタルーニャとロシアの多方面における関係強化を図る任務を授かった。
現在のカタルーニャ商工会議所の会頭ジョアン・カナデイル氏は典型的な独立派だ。彼が経営するガソリンスタンドにはカタルーニャの独立旗を掲げている。更に、記者会見での質問もカタラン語でないと回答しないという徹底さである。
2017年のロシアとの接触では1万人の軍隊を派遣する話まであった
アライ氏がロシアでドゥミトゥレンコ氏の仲介で接触した人物にはオレグ・V.シロモロトフ氏がいる。彼はロシア連邦保安庁の元長官で、現在は副外相のポストにある。エフゲニ・プリマコフ氏とも接触した。彼はエルツィン大統領政権下で外相そして首相を務めた人物で、旧KGBとも繋がりがあった。
このような接触からプッチェモン氏が目指していたのはカタルーニャが独立した暁にはロシアからの支援が保障されることであった。
しかし、ロシアとの接触は今回が初めてのことではない。カタルーニャで独立を問う住民投票が実施された2017年にロシアとは既に接触が始まっていた。この接触を切り開いたのは、スペインの民主化以降からカタルーニャの独立を目指す政党として存在していた「カタルーニャ民主集中」の外交を担当していたビクトル・テラデーリャス氏であった。同年、彼はプーチン大統領と繋がりのある有力議員セルゲイ・マルコフ氏と接触している。この接触が明らかになったのはテラデーリャス氏がカタルーニャ共和国左派のシャビエル・ベンドゥレイル氏との2018年5月16日の電話での会話を治安警察が盗聴したからであった。またこの通話の中で、ロシアは1万人の軍隊の派遣をする用意があることも明らかにされた。(2020年10月28日付「ラ・バングアルディア」から引用)。
なお、この軍隊の派遣というのはクリミア占領でも見られたように、恐らくロシアの傭兵部隊ワグナーの戦闘員であろう。また別の情報筋によると、カタルーニャが独立した暁にはバルセロナ港をロシアが利用できるようにすることも支援条件の中にあったという。
ロシアはEUの勢力を弱めるべく、このような独立の動きがあるとそれに協力する姿勢を容易に示す傾向にある。
独立機運が高まれば逆にカタルーニャの経済は後退する
カタルーニャの独立を望む動きが活発になればなるほどカタルーニャの企業や外国からの投資はますます後退して行くのは必至である。カタルーニャは嘗てスペインを代表する国際都市であった。しかし、今では独立騒動の影響でカタルーニャの将来の経済的発展に疑問が持たれている。というのも、カタルーニャには独立賛成派と反対派が50対50で完全に二分しており、大半の住民が独立に賛成しているわけではないからである。