映像の世紀コンサートの醍醐味

2021年9月23日、東京都墨田区にある「すみだトリフォニーホール」にて、映像の世紀コンサートを鑑賞してきた。コロナ禍以前には、コンサートは年に一回は会場で鑑賞していたのだが、コロナが感染拡大した2020年は観に行けず。何より、映像の世紀コンサート自体も、本来ならば、昨年3月に開催されるはずだったのだが、コロナにより延期から中止に。私も楽しみにしていたが(仕方ない、またの機会に)と諦めるしかなかった。

しかし、その後、今年9月についに開催される事が決まり、すぐに予約したのだった。ちなみに映像の世紀とは、1995年から翌年にかけて、NHKで放送されたドキュメンタリー番組のことである。世界中から収集した貴重な映像で激動の20世紀を描いた番組だ。私は当時、小学生の高学年で、まだリアルタイムでは観ていなかった。もちろん、その存在は知っていたが、予告編の生々しい映像で(怖い番組)として敬遠していたようにも思う。

しかし、祖父は同番組を観ていたようで、更にはしっかりとビデオで録画までしてくれていた。その録画したものを、中学2年生(97年)の5月にビデオで一気に観たのである。確か最初に観たのは、第2集「大量殺戮の完成 ~塹壕の兵士たちはすさまじい兵器の出現を見た」だった。第一次世界大戦で登場した大量殺戮兵器ー戦車・毒ガス、そして過酷な塹壕戦により、心身を消耗していく兵士たち。その様子が映像に鮮明に映し出されており、私は衝撃を受けた。ヒトラーの台頭とユダヤ人迫害、民族の虐殺の回も生々しい、残酷な映像の数々が映し出されており、食い入るように画面を見つめたことを覚えている。番組ナレーターを務める山根基世アナウンサーの淡々とした語り口も、強烈な印象を残した。私は貪るように映像の世紀シリーズを観た。第1集から第11集まであるのだが、何度も何度も繰り返し観た。映像の世紀に出会ったお陰で、近現代史にも関心を持つようになった(私はそれまで、戦国時代や幕末が特に好きだったのだが)。そういった意味でも、貴重な出会い、体験だったと言える。

さて、コンサートである。コンサートはメインテーマ「パリは燃えているか」から始まった。作曲家、ピアニストの加古隆氏の代表曲である。加古氏の透き通るようなピアノの音色が美しい。指揮は岩村力氏。コンサート東京フィルハーモニー交響楽団による番組曲の演奏だけでなく、スクリーンに映像の世紀の名場面が映し出され、更に要所要所に、山根アナウンサーのナレーションが入る。山根アナの生の声を聞けたことも、長年映像の世紀を観て来た者としては嬉しいことである。スクリーンには20世紀を生きた人々の顔がアップで映し出される。笑い、涙、悲しみ、怒り・・様々な顔がそこにはあった。20世紀とはどのような時代だったか、いや人間の世とは如何なるものであるのか、改めて実感できた2時間だった。映像の世紀は、現在は「映像の世紀プレミアム」として、新作が放送されているので、特に若い人にも観てほしい。