ワクワクしない衆議院選挙、なぜ?

いよいよ衆議院選挙ですが、個人的に久々のワクワクしない選挙のような気がします。党首討論会も数多く開催されましたが、やればやるほどよくわからなくなる、それが今回の選挙の魅力のなさを表しているような気がします。

そこに追い打ちをかけるように「衆院選公示、候補者の多様化遠く 20~30代初の1割未満」(日経)とあり20-30代の若手の候補者は2012年の296人からわずか99人に減少、一方、70代以上が97人と20-30代候補者と拮抗している報じています。

これだけを見ても政治がどこを向いて行われているのか様々な憶測を呼ぶでしょう。日本を背負う世代は政治に対して「自分の一票では何も反映されない」という割り切り感がより強くなり、「何をどう言っても同じでしょ」という諦めすら聞こえてくるのであります。

今回の選挙の特徴は対立軸がほとんどない点です。各党、それぞれ主張はあり、もちろん、差異はありますが、国民を巻き込むほどの論争になっていません。次に給付金ですが、どの党も積極的にとらえています。自民党だけが具体的には踏み込んでおらず、岸田さんの優柔不断な性格とも捉えられかねません。

また、消費税の廃止や一時凍結などを掲げている野党も複数ありますが、自民党を含め、基本的に低下する国民生活レベルを下支えするためにお金を使うというスタンスでほぼ横一直線となっています。特に自民党は分厚い中間層を再構築とし、立民は一億総中流社会の復活を掲げています。これ、どう違うのか、説明せよと言われてもかなり苦しいと思います。

若手の立候補者が少ないということは政治はより真の意味での保守性向が強まるということにほかなりません。もちろん異次元の高齢化社会を迎える日本に於いてより安心安全なくらしを提供するのは極めて重要なことですが、残りの75%の日本の未来を支える世代にどんな希望を与えてくれるのか、そこが本来あるべき公約の主軸ではないでしょうか?

コロナ対策についても各党、細かいところまで踏み込んだ公約を入れています。私は今回のコロナでわかった感染症対策の弱点をまずは総ざらいすべきと考えます。それを踏まえ、次にいつまた起きるかもしれない感染症に対してどういう体制を構築するのか、国民への情報提供やコミュニケーション、感染者への対応、医療体制の柔軟性、危機対応を震災の対策と同様のシステムとして構築するといった公約であるべきではないでしょうか?政党の公約なので微に入り細に入りの内容ではなく、大所高所からどうするのか、そこを私は聞きたかったのです。

自民党の掲げる成長戦略の具体的内容がほとんど語られていないのは今回の自民党の公約の大きな弱点だと思います。2030年に向けてどんな社会を構築したいのか、全ての国民がワクワクするようなそんなビジョンが全然出てこないのです。2030年まであと8年ですが、流れゆく時と共に迎えるのでしょうか?

子供たちはIT機器と接しながら便利さと楽しさを享受していますが、泥臭さがありません。なんとなく学校に行き、なんとなく受験し、なんとなく就職する、そんな社会です。毎日ユーチューブ見ているけれどそれ以上のことはしないし考えることもありません。なぜなら便利で何一つ困らないからです。いざとなったら政府が助けてくれるから、です。

本当にこれでいいのでしょうか?政治家は将来への道筋を切り開く、それが役割です。実務は行政にやってもらう分業体制であるはずなのに政治と行政がほぼ一体化してしまい、三権分立がどっかに行ってしまった感すらあります。

最後に外交ですが、各党、中国を念頭にした安全保障を一義に掲げています。しかし、中国には戦争といった従来型の攻め方への対応だけではなく、全く想定していない切り口への対処が必要です。イデオロギーの塊のような国だからです。その影響力が果てしなく広がった時、日本をどう守るか、という議論は防衛や安全保障だけではなく、自分から積極的に味方を作り、どんな事態が起きても(仮に経済的衝撃が起きても)対応できる極めて高度で広範な対応と対策が必要と察します。日米関係は維持するにしても私が見るアメリカはかつてのアメリカではありません。よりドライな関係になるでしょう。その時、代替え策のオプションを日本は持ち合わせているのでしょうか?日本には一つもないのです。

安倍さんが必死に外遊をしました。コロナでそれが出来なくなったのですが、では新しい総理がそれを引き継ぎ、海外のトップと渡り歩けるか、といえば期待薄です。結局、安倍さんだからこそできた技となり、それが伝承されなければ意味がないのです。

選挙戦において外交は劣後するのは定石でありますが、本当にこれでよいのか、というのが各党首の発言、および公約を読む限りの私の印象です。良い選挙になってもらえばと思います。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2021年10月19日の記事より転載させていただきました。