飛行機のいない空港から駐機場に:発想を変えて成長するカステリョン空港

飛行機のいない空港だったカステリョン空港が、駐機場に変身して成長をつづけている。

飛行機のいない空港

スペイン・バレンシア市からバルセロナの方に60キロ向かったところに人口17万人のカステリョン市がある。そこに「飛行機のいない空港」または「散歩するのに適切な空港」と皮肉られたカステリョン空港がある。

1990年代から2000年代にかけてバブル景気が手伝ってスペインの各自治州が経済発展の為に空港の建設がブームを呼んだ。スペインで52の空港が存在するまでになった。そのひとつがカステリョン空港である。バレンシア市から僅か60キロしか離れていないところに空港を建設するなど採算が取れないことは建設する前から一目瞭然であった。

ところが、バレンシア州カステリョン県の県議会議長でカステリョンではドン的な存在だったカルロス・ファブラ氏の意向が影響して1億5000ユーロ(180億円)を投じて空港が建設された。

2011年に空港が完成した時点ではまだ乗り入れに関心を示した航空会社はどこにもなかった。飛行機が離着陸を開始したのはそれから4年後の2015年のことだった。それ以後も乗り入れに関心を持ちそうな航空会社は他に現れたなかった。

駐機場として蘇った

スペインでは空港が採算ベースに乗るには最低でも10万人の利用客が必要とされていた。カステリョンとその周辺都市の人口を加算しても50万人に満たない。しかも、バレンシア空港まで60キロしか離れていない。車で1時間もかからない距離だ。

この空港が今、駐機場として蘇っている。昨年2020年に駐機した飛行機の数はスペインで4番目に位置する空港にまで成長している。バラハス空港、シウダーレアル空港、テルエル空港、カステリョン空港という順になっている。バラハス空港はスペインを代表する空港。それ以外の3つの空港は前述したように、バブル景気の影響で建設された空港だ。それを駐機場として最初に変身させたのがテルエル空港だ。それに続いたのがシウダーレアル空港。そしてこの2つの空港を見習ったのがカステリョン空港である。

飛行機の駐機と解体がビジネスとして成長

カステリョン空港は一度に50機以上の飛行機が駐機可能となっている。コロナの影響もあってどの航空会社でも飛ばせない飛行機が多くある。それを駐機させ定期的にメイテナンスを実施。あるいは、もう使用することがなくなった機材を解体して使える部品をスペアーパーツとして飛行機の持ち主に渡したり売却するといったことが仕事としてある。

現在、機材のメイテナンスにはBrok-Air社、解体には英国のeCube社が現在そこで作業を行っている。

事業の拡張でBrok-Air社は今年始めに駐機場をさらに2万平米拡張。一方のeCube社はメイテナンスの事業拡大にと2500平米のハンガーを建設した。

特に解体事業はこの先20年間にヨーロッパでは1万2000機の解体需要があると見込まれていることから前途洋々である。(10月13日付「エル・エコノミスタ」から引用)。

空港というものの発想を変えて成長しているビジネスがここにあるということだ。