日本株のアクティブ運用が「良さげに見える」理由

ファンドマネージャーが銘柄を選ぶアクティブ運用と、指数に連動して平均点を狙うインデックス運用は、どちらを選ぶべきか?これは資産運用の世界では永遠のテーマとなっています。

私は、言うまでも無く確率的に見てインデックス運用の方が勝ち目が高いと考える「インデックス派」です。

今週、日本経済新聞に掲載されていた記事では、各アセットクラス(資産の種類)毎に、アクティブファンドとインデックスファンドの過去の実際のリターンを比較しています(写真も同紙から)。

数字を見ると、運用期間が長くなればなるほどインデックス運用の優位性が目立つようになり、10年の累計リターンでアクティブ運用がインデックス運用を上回っているのは、日本株と国内REITだけという結果になりました。

しかし、このデータから日本株のアクティブ運用のファンドマネージャーの銘柄選択能力がインデックス運用より優れていると結論付けるのは早計です。

まず記事の中でも指摘されている通り、日本株のアクティブ運用の投資信託は中小型株のようなリスクの高い銘柄にフォーカスした運用が多く日経平均や東証株価指数(TOPIX)のようなインデックスと単純比較するのはフェアではありません。シャープレシオのようなリスク調整後のデータで比較をする必要があります。

もう1つの要因は、サバイバーシップバイアス(生き残りによるバイアス)と呼ばれるアクティブ運用ファンドのリターンの過剰評価です。

katleho Seisa/iStock

これは、長い運用期間のデータがあるファンドは、運用成績が良かったから生き残った結果であり、成績の悪いファンドは途中で次々と消えていく。だから長期のデータが良くなるのは当たり前という現象です。

「長期で運用成果が良い」のではなく「運用成果が良いものだけが長期で生き残った」という訳です。

この記事から得られる結論は、今までと変わることはありません。

個人投資家は金融資産に関しては、やはりインデックス運用をするのが賢明ということです。


編集部より:このブログは「内藤忍の公式ブログ」2021年11月12日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。

資産デザイン研究所社長
1964年生まれ。東京大学経済学部卒業後、住友信託銀行に入社。1999年に株式会社マネックス(現マネックス証券株式会社)の創業に参加。同社は、東証一部上場企業となる。その後、マネックス・オルタナティブ・インベストメンツ株式会社代表取締役社長、株式会社マネックス・ユニバーシティ代表取締役社長を経て、2011年クレディ・スイス証券プライベート・バンキング本部ディレクターに就任。2013年、株式会社資産デザイン研究所設立。代表取締役社長に就任。一般社団法人海外資産運用教育協会設立。代表理事に就任。