国民的なゼネコン意識が日本を滅ぼす:基幹産業は移民が担うのか --- 鈴木 歩

私は一介のゼネコンの老現場監督だが、もう十数年気になっていたことがある。

建設作業員(職人)不足と高齢化だ。

設計職や事務職をしたい若者はまだ多い。 metamorworks/iStock

当時はバブル崩壊後、若い人が敬遠していたが、不況のせいもあり、また団塊の世代やバブル時の入職者で十分回っていた。むしろ民間工事の冷え込み、小泉改革の公共工事切り捨てで、過当競争になっていた。

20年以上前、新規入場者教育で50歳以上をはねていたことがあった。現場の先輩曰く、「こんな年寄りを入れたら事故になる」と。現在では50代など働き盛りの年代であるし、大手ゼネコンの現場でも、かなりの年配者が働いている姿を見る。

なぜ、建設作業員不足になったかといえば、言うまでもなく3Kであるし、なにより給与が安いのだ。ようはゼネコン構造なのだ。また、パワハラが酷い現場監督も少なからず存在する。

3Kと揶揄されても、建設作業員はかなりの適性が必要だ。また、一朝一夕に作業ができるようになるわけではない。足りないから急に給料を上げても集まるものではない。

けれども、業界は需要の増減のバッファーを作業員たちに押しつけてきた。

先日、近所の駅を通りかかったとき、以下のような光景が見られた。

点字ブロックを張り替えるだけなのだが、ひとりの作業員に対し、十名を超える傍観者である。傍観者は、発注者やゼネコン、サブコンの社員であろう。

たしかに、間違いがないよう確認のために全員が集まったと慎重な姿勢ともいえるだろう。

しかし、私にはこれは象徴的な光景に見えた。

IT業界も中抜きばかりのピラミッド構造が酷いと聞くが、今でもそうなのだろうか。テレビ局はさらに酷いのだろう。

建設業界もゼネコンは下請けに丸投げし、監督しているだけと批判される。現場の人間はそこまで楽ではないのだが、言われて仕方のない面もある。

日本人は皆、サラリーマン(事務職)になることが社会人になること、将来の夢になってしまった。

そのゼネコンに関しても、大手ゼネコンを頂点とした序列がある。ゼネコンが大規模になればなるほど、サブコンが上げ膳据え膳に対応してくれるので、それは技術的な監督というより事務職になっていく。

その一方で、大手ゼネコン・準大手ゼネコンの社員の働き方改革は進んでいるようだ。

IT化・AI化のおかげらしい。

しかし、いくらIT化・AI化しても、現在すでにある建物のメンテナンスがロボットができるようになるにはまだまだ時間がかかるだろうし、それができるころには事務職は技術的にまったくいらなくなっているかもしれない。

ほんとうに必要なものを作る人間は、いなくなってしまう。ゼネコン構造は建設業界だけではない。日本の至る所にある。

その解決策はどうするか。

そこで移民である。

私たちは大事なことを忘れたまま、事務職のための国を維持しようとしているのだ。

けれども、そんな都合のよい人材はどこにもいないと気づく日は、そう遠くないだろう。

鈴木 歩
現場監督。一級建築施工管理技士。


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