来年、侵攻は起きるのか?

2022年は混とんの年になると私は予言しています。私は予知能力があるわけではないですが、世界の様々な状況や人々の動きを俯瞰してみていると抑えが効かなくなっている、そんな風に見えるのです。バイデン氏のアメリカは民主党政権という誰にでも優しくばらまき型で現代社会の救世主のような背景を持っています。しかし、私にはバラ色に見えないのです。うわべだけの心地よさで実は何も改善していない、そんな社会に見えるのです。

DKosig/iStok

岸田首相の支持率は今のところ数字上では維持されています。しかし、そのうち確実に下がるはずです。なぜなら「聞く力」が素晴らしいというけれど「実行する力」は全部中庸なものになり、本当の改善につながらないからです。

今の時代、人々は何をやっても満足しません。よって満足させようとするより信念をもって貫くほうが良いのではないかと考える人もいます。

その流れで行くと習近平氏ほど信念を持った指導者はいないでしょう。しかも国家が一丸となってそれを支えているところに恐ろしさすら感じるのです。一種の宗教のようなもので「私を信じなさい、そうすれば必ず幸福がやってきます」というようなものです。

もう一人、プーチン大統領も野望の塊です。1999年12月にエリツィン氏の大統領代行、2000年5月から正式な大統領を経て一時首相をやりながら結局、21年間国家のトップに君臨しています。そしてその間、どれだけ操作しようとも世論を一定の形で支配し、国家を自分の意図の通り動かしてきました。ロシアではソ連時代から反政府派の声が大なり小なり必ず上がりますが、見事にそれを潰してきました。多くの大衆は不満を持っていてもそれを口にすることはなくなります。

西側諸国はこれら独裁的で人権的自由がない国家に対立すべく様々な圧力をかけてきました。経済制裁はその最たる手段です。イランやベネズエラなどもそれで苦しみました。しかし、ロシアと中国というセットが手を組めば西側諸国がそうやすやすと成果を上げられる状況にはないのです。

12月3日の本ブログで「きな臭いウクライナと台湾問題」と題してウクライナと台湾、ロシアと中国を関連付けた「物語」を書かせていただきました。多分、あの時点で研究レベルでは別として、表だって書いたものは少なかったと思います。

19日の産経に「中露の同時侵攻 米国が抱える21世紀最大のリスク」と題した有料記事があります。なんていうことはない、私の物語をより現実的な事実をベースに肉付けした記事です。しかも、私の「物語」というレベルではなく、もうその現実が迫っているという緊迫感が漂います。更にロシアのウクライナ侵攻を1月末から2月上旬と時期まで明示しています。

19日の日経一面トップに「世界の穀物 中国買いだめ 過半の在庫手中に 貧困国に余波」とあります。これを読んで私はかなりひねくれた理解をしました。なぜ、必要以上に買いだめをするのか、それは戦争になり中国向け食糧の輸出が禁止されたり細った時の対策ではないか、とみたのです。

戦国時代の兵糧攻めはご存知の通り、城を包囲し、食糧を持ち込ませないようにすることです。当時、それに対抗して大量の食糧を城に持ち込み、持久戦に持ち込んだケースもありました。先の大戦の際、日本は石油資源だけではなく、食糧も不足し厳しい戦いとなり、戦後の飽食時代の背景にもなりました。今、中国は兵糧作戦への対策をしている、そしてロシアと融通し合うぐらいのつもりもあるかもしれません。

また中国は新興国や途上国の取り込みに躍起になっています。世界を二分化した場合、明白な勢力地図が描けるでしょう。つまり、ロシアにも中国にも本気度が見えるのです。それはプーチン氏と習近平氏の信念であり、執念でもあるのです。

ところが残念ながら西側諸国のトップは民主的に選挙で選ばれます。激しい選挙戦を通じて当選したケースが大多数を占めます。とすれば内政に於いて自身の反対派への配慮と対策に大きな時間とエネルギーを費やさねばならない弱点があります。これがアメリカも日本もそして欧州のほとんどの国家も中庸でバランス感覚を重視する政策に頼らざるを得ない理由です。

米ソ冷戦時代の均衡はなぜ保たれたかといえば双方が武器などの戦力の誇示という同じ土俵での戦いをしたからです。ところが現在は違います。バイデン氏は明らかに戦争などやりたくないし、やらない方針です。仮にロシアがウクライナに攻め入れば経済制裁を行うというだけです。ところがアメリカがロシアに経済制裁をしても本当に困るのは欧州であり、欧州とアメリカの温度差が出てしまう問題が生じるでしょう。実際、完成済みのロシアからドイツへのパイプライン、ノルドストリーム2はアメリカのプレッシャーでドイツに天然ガスを送れないのです。不利益を被るのは欧州なのです。

戦争というのは力と力のぶつかり合いですが、侵攻というのは一方的に攻め入ることです。西側諸国はロシアや中国を直接的相手として戦争をするでしょうか?私にはその想像力はないのです。

仮に侵攻が成功裏に終わった時、アメリカは強制的なデカップリングをするのでしょうか?そうだとすれば世界経済は崩壊的な衝撃となります。GDPは数十年分逆戻りしてもおかしくないでしょう。我々の住むこの人類社会は本当に微妙でギリギリのバランス上の上で成り立っているのを改めて実感する日々であります。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2021年12月20日の記事より転載させていただきました。

会社経営者
ブルーツリーマネージメント社 社長 
カナダで不動産ビジネスをして25年、不動産や起業実務を踏まえた上で世界の中の日本を考え、書き綴っています。ブログは365日切れ目なく経済、マネー、社会、政治など様々なトピックをズバッと斬っています。分かりやすいブログを目指しています。