フィナンシャルタイムズ(FT)に中国の投資家が、不動産に見切りをつけ、新たな投資先として高級腕時計に資金をシフトさせているという記事が掲載されています(写真も同紙サイトから)。
過去20年間にわたり高い経済成長と共に価格上昇してきた中国不動産ですが、中国政府の不動産価格抑制政策によって曲がり角を迎えています。
また、中国恒大集団など、多額の負債を抱えたいくつかの不動産開発会社が経営危機に陥ったことも、不動産マーケットの地合いの変化を象徴しています。
その一方で、中国のスイス製腕時計の輸入額は、今年10月までで40%増と大幅に伸びているそうです。
この記事の中では、香港のコンサルティング会社が、年収50万元(約896万円)以上の成人1500人に行ったアンケートも紹介されています。それによると、回答者の88%が今後12カ月間に高級腕時計への購入を維持または引き上げる予定と回答したそうです。
中国では、ロレックスやパテックフィリップのような高級ブランド腕時計が、宝飾品ではなく投機の対象になってしまっているようです。
リーマンショック以降続いてきた世界的な金融緩和政策は、当初の目的であった消費者物価のマイルドな上昇を実現することはできませんでした。その代わりに、株式、債券、不動産、資源、暗号資産、アート、高級ワイン、アンティークコインなど、あらゆる実物資産価格の高騰を招きました。
高級腕時計には、同じ実物資産であっても不動産と異なり、持ち運びしやすいというメリットがあります。
中国では国内資産を海外に運び出す手段としてこのような資産が活用されているという側面もありそうです。
いずれにしても、このような中国経済の動きが事実であれば、その価格の動きはグローバルに波及することになるでしょう。
編集部より:このブログは「内藤忍の公式ブログ」2021年12月24日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。