リモートワークは本当に正解か?

リモートワーク万歳、新しい時代の幕開けだといってたのは20年夏ごろでしたでしょうか?九十九里に軽井沢、三浦半島や伊豆半島に住みながら仕事をする職住接近の真逆である職住分離が当たり前になるとまで言い切ったネット記事も無数にありましたが、日本生産性本部の調査ではテレワークの実態は20年5月が31.5%で最高、その後、20%前後で落ち着き、21年10月の調査で22.7%となっています。

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つまりリモートワークのメリットを享受できる人は働く人の概ね5人に一人に留まるということです。また、一概にリモートワークと言っても全ての日がリモートになるわけではなく、週1-2回程度という企業が多く、結局、遠隔地に住んでも長い時間をかけて職場に行く日が増えているということです。

リモートワークが一気に広まったのは感染症予防、緊急事態宣言という未経験ゾーンに於いて誰もやったことがないそのやり方にチャレンジせざるを得なかったことが背景です。テクノロジーが社会を積極的に変えたのではなく、テクノロジーのおかげで助かったということです。しかし、その結果としてリモートワークに非常にメリットを感じた方の声が大きかったのも事実です。私はずっと「そんなに浮かれちゃだめよ」とwarningを出していたと思います。

私が今、関与している案件で最新のテクノロジーを積極的に取り入れている会社があります。付き合い始めの頃、へぇ、と感心してみていたのですが、数か月で化けの皮が剥がれました。それは会社が縦割りになり、部門間同士のコミュニケーションが悪く、それが仕事の質につながり、顧客である私を爆発させたのです。私は上司に当たる方に直接申し上げました。「縦割りの弊害、感じたことありませんか?」と。彼ははっと気が付き、それから彼は社内調整に尽力をして私との仕事は風通しもよくなりました。

オンラインミーティングを数多くこなしている中で思うことは「会話の本質」を見抜くのが難しい点です。例えばZoomにしろオンラインでやる場合、資料を画面に映し出す結果、参加者の顔はごく一部しか見えません。しゃべっている人も聞いている人の表情も見えにくいのです。何故か、といえばあるテーマに沿った話をしている中で発言者の主張や意見は個別案件に対する意見なのか、個人の信条や信念なのか、調査結果なのか、はたまたどこかの入れ知恵なのかこれを見抜くのは至難の業であるのです。

リアルミーティングの場合、発言者は緊張度の高い発言を求められ、変なことを言えばすぐに突っ込みが入ります。ところがオンラインの場合、突っ込みを入れるタイミングが難しい上に話がどんどん流れていく、滑るというか、いつの間にか、終わっているということもあるのです。「あれー、想定と違う結果だなぁ」と思うことはありませんか?私はしばしばあるのです。

またオンラインの場合、どうしても話がおおげさになる傾向もあります。それは発言者の主張に対して抑えが効いてないからです。たった一つの形容詞の使い方次第で聞き手の印象はまるで違うのですが、そこが慣れていないというか、まるでユーチューバーにでもなった感じで独演会になってしまう人もいます。

私が所属しているNPOで私が来年トップを務めることになるのですが、それに向けて様々な新しいアイディアを数多く準備しています。その中の一つがプレゼンテーション能力の強化です。先日TEDxのイベントに行きました。TEDトークのローカル版です。持ち時間10分でテーマ自由、2メートルぐらいの赤い丸い枠の中からはみ出さないようにして身振り手振り主張をします。同様のプログラムに北米の400以上の大学で取り入れらている3MT(Three Minute Thesis=3分間のテーゼ)があります。私は独自なプログラムを作り、来年このNPOで紹介、実行します。素晴らしいパフォーマーには大勢が集まる前で披露して頂こうと思っています。

それはオンラインがsit backしてリラックスしながら会議に参加し、発言しなければただ聞き流すだけで印象にも止まらないそんな無意味で生産性の低いことでも「仕事をしている」と勘違いされたくないからなのです。このままではリアルビジネスができる人は本当に限られてしまうという危機感から考えついたのです。人を説得するのはそんなたやすいことではありません。オンラインミーティング花盛りの今だからこそ、リアルのスキルを身に着けることをあえて行う勇気が必要だと考えています。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2021年12月24日の記事より転載させていただきました。