昨年に引き続き二度目の「今年のつぶやき」。一年を振り返ってみればまたもやコロナに引っ掻き回された年でした。私は河野太郎氏ら当時の閣僚のもと、一気に世界主要国を抜き去ったワクチン接種の動きを評価しています。今日のオミクロン株による影響も少なく、年末年始に人々が動けるのもこのおかげではないでしょうか。一方、ウィズコロナライフに様々な工夫が凝らされてきたのもこの一年でした。一時は極論が跋扈し、試行錯誤というより右往左往だったあの時もいつかは人生の「思ひ出」の一幕となるのでしょう。
では今年のつぶやきをお送りします。
株で人は本当に踊ったのか?
2020年3月の大底から大反転を見た人たちが2021年こそとリベンジを狙い、プロから新規参入者までこぞって市場で「存在感」を示そうとしたのがこの一年でした。その中でも個人投資家たちがSNSなどで業績を無視した株価祭りをしたのが「ミーム株」。AMCやゲームストップといった銘柄が蝶のように舞いました。一方、GAFAMには機関投資家をはじめ、量をこなせる銘柄として全員参加型となりました。株価だけを見ればそれらの銘柄は一年で2-3割程度の上昇に留まり、2倍、3倍が当たり前の一部業種と比べればやや迫力には欠けました。来年あたりはこのトップ5社の入れ替え戦があるかもしれません。脱落組の候補はF(フェイスブック)とA(アマゾン)で昇格候補がT(テスラ)、N(エヌビディア)とみています。
日本はどうかといえば20年12月28日の大納会終値が27444円、春と秋に3万円を超えるもその勢いを維持できず、一年を通じてほぼ足踏みとなりました。(一応昨年比4.9%高ですが流れはフラットでした。)日本に於いて個人投資家を増やすには代表的銘柄への資金流入と時価総額の上昇が肝です。しかし、「マネーは北米に向かう」という格言ができるほど資本市場がいびつになってしまったのもこの1年でありました。まさに市場に関して言えば「アメリカ一強」だったと断言してよいでしょう。おかげで今になって多くの日本人投資家はアメリカ株に投資をしたいと考え、銘柄選びができない方はアメリカ株の投資信託が爆発的人気となっています。
今年も一年間、市場とお付き合いした私の印象はとにかく値動きが荒かったと思います。マネーに対する市場の心理、つまり投資家のガラス細工のような繊細さぶりはオーバーリアクションになりやすいということを改めて見せつけたと思います。「悪い」というニュースに早く退散しなきゃと思う人が多いということは大局観がなく、その場の雰囲気に乗せられている人が多いことです。AIやプログラム売買はその心理を数値化して更に抑制すら効かないものにします。それを考えるとアメリカ市場のように市場参加者が多岐にわたるマーケットはボトムラインでは安心感が高かったともいえそうです。
政治と民主主義
昨年のこの項では「安倍晋三のみそぎ」とし、菅政権は厳しいと書かせていただきました。その菅氏は辞任し、二階氏を道ずれにしました。そこに託したのは「希望と未来のあるニッポン」だったはずです。過去形になっているのはどうも怪しい、という気がしてならないのです。世論調査では岸田首相は支持されていますが、あまりにも中庸、凡庸で落第点を取らないバランス重視型に走りすぎています。それも理由なのか、はたまた安倍晋三氏のみそぎが終わったのか、党内で保守派と主流派に溝が生まれています。
一方、変わったのが立憲民主党。「国会のクレーマー」の象徴だった同党、というより枝野幸男氏とその仲間たちがワクチンショットで急激に不活性化したのがこの直近の大きな変化です。その間、維新も国民民主も動き始めており、いつかは政界地図が変わるのではないか、という予兆すら感じます。つまり野党の息吹です。岸田政権があまりにもバイデン政権と似た体質であり国民はぬるま湯に対してストレスをため始めるかもしれないという気配も感じています。
経済は復興したけれど政治は後退した、それが私の1年間の感想です。しかもそれは日本だけではなく、アメリカが最も後退し、その背景は民主主義の位置づけが急変した点です。かつての民主主義は51対49の理論。つまり49人には泣いてもらうことも辞さなかったのです。今の民主主義はマイノリティ重視の民主主義です。それが人種問題のみならず、少数意見を聞くという姿勢がデッドロックに乗り上げたとみています。理由はIT社会の浸透による「興味ない世界は見ない、私は私」という新ミーイズムです。岸田首相は無限に広がるまとまりのない意見を聞く力ではなく「腰の据わった実行力」が本来あるべき姿だと思います。信念の政治をしなければ安倍晋三氏が前に大きく立ちふさがることになりそうです。
ひろの一年
一言で表現すれば「手も足も頭も使いきった一年」でした。ゲームのごとく次々と難題が発生する中、一つずつ丁寧に立ち向かった、そんな感じでしょうか?昨年は「しっかり乗り越えた一年」と書かせていただいたのですが、共にいえることは「大ジャンプはしていないけれど守るべきを守り、攻めるべきを攻める」ということかと思います。自分がしっかりしなければこのブログを書く時間もなかったでしょう。私は地道な努力とチャレンジ精神のバランスの中で38年の社会人生活を送ってきました。途中、何度か大きなジャンプもしているし、一生に一度の特大ジャンプもしています。でも経験を積むと昔はジャンプ、今ではちょっと駆け足程度でこなせる自分がここにいることに気が付きました。
長時間事務所仕事をする中で意識したのはカラダの健康とココロの健康。体の方は運動レベルを更に上げました’。フィットネスの時間はより長く激しく、そして高い山をよじ登り、ロードバイクで若者達のグループに食らいつきます。ココロの健康とはとにかく人付き合いを維持したこと、それもなるべくリアルで酒を飲み、笑い、議論し、生活に刺激とリズムを持たせたことでしょうか?オンラインの利点は効率化させるには最高だけど人間関係は一つも育めない、これが私の感覚です。だけどリアルで深く繋がっていればあとはオンラインでもその関係は構築できるのです。
世の中が移り変わる中で自分の立ち位置をしっかり確認してきました。一方でそのペースに乗れない若手も私の周りに結構いました。敢えて言うなら「浅はかな信念」の間違いに気がつかず苦労する人が多かったように感じます。そして相談相手がなく、自分の中でぐるぐる思案するのです。私は若い方との接点が多い中、「じじぃの戯言」にならない程度のちょっとしたアドバイスをすることを心がけてきました。今年もそれは続けました。大きく花咲いたものもいくつかあります。私は社会の中で共生しているということを自覚しながら「利他の心」ならぬウィンウィンとなる「自他の共生」で今年も一年無事に終われたことに感謝です。
後記
バンクーバーも氷点下5-10度の寒さで水道管の破裂があちらこちらで起きています。私どもはマリーナという水道管が露出している施設を持つため、数カ所の水道を細めながらも出しっぱなしにして凍結防止をします。それでも破裂するときは破裂します。今年は今のところは大丈夫ですが、水道を出さなかった隣のマリーナは水道管が凍り付き、回復するのは寒気が収まる数週間先。私どものオフィスでは下の階でスプリンクラーや水道管が3日で3回飛び、水は数フロアを完全にダメにし、エレベーターは全機、水に浸かっています。悲惨な状況です。年の最後に祟られました。不運はこれで出し尽くしです。
では今日はこのぐらいで。皆様良いお年をお迎えください。
編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2021年12月31日の記事より転載させていただきました。