2022年の展望

明けましておめでとうございます。今年も突っ込みどころ満載のフレッシュなネタに皆様の舌鋒鋭いコメントにワクワクさせていただければと思います。

Dilok Klaisataporn/iStock

さて、2022年、ざっと見渡しただけでもネガティブなイシューが山積しています。政治化する北京五輪、習近平氏3期目への道、アメリカ中間選挙、アメリカの想定通りの利上げの有無、物流混乱の解消はあるのか、半導体製造のキャッチアップ、ミスマッチする労働市場、コロナの行方、ロシアウクライナ問題、中国台湾問題…。他にもまだいくらでもあります。ただ、不思議と日本が直面する緊急問題は割と少ない、そんな感じがします。

私は日本を憂える意見を数多く発してきました。その多くは長期的な視点での立ち位置の問題であり、世界と日本の比較論であったと思います。もしも比較をしないのであれば多くの方のコメントにもあるように日本は過ごしやすく、安定していて今のままであって欲しいと思える国家です。物価は国家の成熟度と比較すれば世界でも格段に安く、良質な商品は豊富で無数の中から自分に合ったものを選び、それが極めて容易く手に入ります。

美味しいものがあふれ、外食をしなくてもスーパーの総菜一つでも工夫を凝らしています。最近は無人の冷凍食品の自販機店舗なるものが増えてきていると報じられています。海外では無人の自販機などあれば壊されるのがオチです。とすれば安全安心度も極めて高いのにそれでも会話は「セコムした?」です。ある意味、鉄壁の防御ともいえるのでしょう。

日本はなぜ変わらないのか、それは国民性もありますが、なかなか改正できない憲法と役人の作り上げた社会のシステム、それを支える法律があまりにも細かく規定され、複雑怪奇となったことで変わりたくても変われないことはあるでしょう。複雑になったのは人々の要望を様々な角度から検証し、それをパッチワークのように反映したからです。世の中、もっとシンプルなほうがいい、私はそう思います。

日本の政治はゆっくりですが変わっていくのでしょう。どこかできっかけがあればぐっと変化するとみています。立憲民主党が体質の大幅変化で反対一辺倒から提案型になるとみています。立民を含む野党は社会の趨勢からは潜在的に今の2倍程度に伸ばせるポテンシャルはあります。「正月早々ボケているのか、そんなことは起き得ない」と思うのは過去を事例にしているからです。政治家も国民も着実にスライドしています。そして私は自民党の緩やかな凋落も予想しています。上から目線の「当たり前政権」は80年代までの政治だとみています。

私は日本の通信簿は正月で甘めですが「オール4」だと思っています。良いのですが、ずば抜けたものがない、そんな状態です。その社会で育つ子供たちは何を目指して大人になっていくのでしょうか?小さいときから満たされ、飽食でゲーム三昧、高校や大学は入学枠が緩くなり、入ろうと思えばどこかに引っかかる、ネットを介してなんでも手軽に満足できる社会において工夫することも汗をかくこともありません。

その子たちに社会人になるのはなぜ、と聞けばお金が欲しいから、学校を卒業すれば働くものだから、といったまるで主体性のない返事が返ってきます。社会人になるにあたり普通は目標が先にあるものです。「将来、何をしたい?」と聞けば「わからない」が主流を占めます。圧倒的な経験と刺激不足から来る惰性社会です。

AI社会がやってきたとき、人間が一番恐れるべきは人間が考えることを止めるということです。パスカルの「考える葦」とは人間の弱さに対して考えることができる強さを言い表したものです。ところがテクノロジーは人間の思考も技術も経験も求めなくなるでしょう。とすれば人間は「ただの葦」でしかなくなります。私はこれが怖いのです。

恋愛もAI診断で選んだ相手を受け入れるのでしょうか?これでは昔、海外の日本人社会で起きた「写真見合い」と同じです。結婚相手は日本から送られてきた花嫁の写真だけが頼りです。日本から到着する船から降りてくる多数の花嫁と港に出迎えに来た写真を持った男たちとの運命の出会いです。不幸にも相手を時々取り違えたという逸話もあります。選択肢がないし、それ以上を望まないそんな社会に再び戻るのでしょうか?

2022年の展望と名付けたのは高いところから見る日本という意味です。その日本は根本部分が何一つ変わることがないと考えています。むしろ、日本全体が共同体化する動きを強めるでしょう。保守というより日本の殻です。その殻はより強固に、そして割れにくいものに向かっていく、それが私の外から見る日本の姿です。羨ましい部分でもあり、距離を感じる部分でもあります。

今年も一年、様々な角度から皆様と交流を深めたいと思っております。どうぞよろしくお願いします。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2022年1月1日の記事より転載させていただきました。