「お年玉は貯金すべきか?使うべきか?」への結論

黒坂 岳央

黒坂岳央(くろさか たけを)です。

この時期に話題に登るお金の話といえば、「お年玉の使い道」である。

お年玉に対しての感覚は、人によって千差万別だ。「全額貯金しなさい」と両親が管理したり、好きなものを買うように奨励する家庭もあるだろう。筆者は子を持つ親として、お年玉をあげたり受け取ったりする立場だが、「お年玉は子供に積極的に使わせるべき」という持論を持っている。

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基本的にお金というものは使うほど、上手に使えるように洗練されていく。時には「こんなもの買うのではなかったな」と後悔する経験もするだろうが、長期的に見ればそれも有意義なマネー教育になり得る。実際、筆者は見栄消費やムダな散財を一切しなくなった理由は、お金を使う経験がそれを助けてくれたと思っている。

「お年玉=全額貯金」は正しい選択なのか?

世の中には「お年玉=全額貯金」という考え方をする人がいる。

その人のお金の価値観を否定するつもりはないのだが、あくまで個人的に「お年玉=全額貯金」という価値観は論理的にネガティブだと思っている。その理由は2つある。1つ目の理由は数十年続いていた日本経済のデフレからインフレへの変遷、それからもう1つは子供のマネー教育にならないことである。

円高・デフレ経済化においては、お金は積極的に使うより貯めることが正義となり得る。しかしながら、昨年に顕在化した円安・インフレが今後も進行する前提に立てば、この戦略が「逆こそ真なり」となるだろう。多くの場合、お年玉は子供時代から大人になるまで長期的に続くため、貯めたお金が目減りすることになるからだ。つまり、貯金以外の戦略的選択を考慮する必要性が生まれる。

そしてもう1つは、貯金では子供のマネー教育にならないということだ。そしてどちらかといえば、こちらの方が問題が大きい。次のパラグラフで詳細に取り上げたい。

お年玉はよいマネー教育になる

お年玉はとてもよいマネー教育になる。時には使い方を誤って、膝を折るような失敗をするだろう。しかし、子供時代なら損失は少額であり、限定的である。これはたとえるなら、補助輪付きで自転車に乗る練習をするようなものだろう。

筆者が小学生低学年の頃は、親がお年玉を預かってしまい、手元に来ることはなかった。だが、途中から自由に使えるように変わった。結果としてお年玉を使う経験が活きたと思っている。

普段、お小遣いがなくても、もらっている子供にとってもお年玉は子供にとっては等しく大金だ。筆者は子供時代、お年玉を心待ちにしており事前に「お年玉を受け取ったら、何にどう使おうか?」と考えていた。まとまった資金が必要となる、ゲーム機やAV機器(Audio Visual)などを買っていた。

お年玉がもらえるのは、年にたった一度だけである。その貴重すぎるチャンスは絶対にムダにはできない。そう考えて、購入する時は慎重に検討を重ねていた。ほしいと思ってもすぐには買わず、何度も何度も電器店に足を運び、展示品をいじくり倒してカタログや雑誌を読みまくり、その上で購入を決めていた。

ある時、「装着すれば、目の前に巨大な映像スクリーンがあるように見える機器」に魅了された(今で言うプレイステーションVRのようなもの)。欲しくてたまらず、この時だけはあまり購入前のリサーチをせずに勢いだけで買ってしまった。だが、結論的にこの買物は大失敗した。買って付けてみたが、映像が見えづらいく目が疲れる。購入してたった数分で「自分はとんでもない大失敗をした」と膝から崩れ落ちる気持ちになった。

ここで得た教訓としては、発売直後の先端テクノロジーは、購買欲を刺激するフレーズだけで安易に判断してはならず、実際に体験して納得した上で決断を下す必要があるとその時に理解した。この経験は今でもしっかり活きている。

また、お年玉を使ってAV機器やゲーム機、パソコン・パーツなどで自作したことで、それが今も知識や経験となって活きている。若いときの感受性で、ワクワクするような体験をすることの価値は計り知れない。歳を取るとこのような気分の高揚感は永遠に失われるからだ。

お年玉は大いに子供に使わせるべきで、その用途も親が過剰に干渉するべきではないだろう。大人から見れば、子供は愚かな使い方をするかもしれない。だが、子供にとってはビビッドな経験になりえるし、よしんば失敗してもそれも有意義な体験となるだろう。

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ビジネスジャーナリスト
シカゴの大学へ留学し会計学を学ぶ。大学卒業後、ブルームバーグLP、セブン&アイ、コカ・コーラボトラーズジャパン勤務を経て独立。フルーツギフトのビジネスに乗り出し、「高級フルーツギフト水菓子 肥後庵」を運営。経営者や医師などエグゼクティブの顧客にも利用されている。本業の傍ら、ビジネスジャーナリストとしても情報発信中。