「新しい資本主義」の新型コロナ対策は費用対効果ぬきの聖域か

篠田 英朗

オミクロン株の「津波」が押し寄せ始めているが、「予報」通りだ。諸国の取り組みから情報を得ている。広い視野を持った合理的な政策の実施を望む。

「コロナ死者数を1人減少させるためにどの程度の経済的犠牲を払いたいか」を試算すると、日本は約20億円、米国は約1億円、英国の約0.5億円だという。

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各国がいずれも従来の資本主義の論理だけでは説明できない対応をしているとはいえ、日本の「新しい資本主義」ぶりは際立っている。

首相官邸HPより

なにやら日本では、新型コロナ対策は、高齢者と肥満者を保護するため、費用対効果の検証を抜きに予算を投入してよい聖域となっているようだ。

果たして本当にこれでいいのか。

高齢者や肥満者は、将来世代への感謝を表すとともに、責任負担の在り方について考え直す機会を得たいとは思わないのか。

総理大臣が新しくなったからといって、短期決戦を繰り返すような政策だけになっていないか、日本の新型コロナ対策に持続可能性があるのか、政策担当者は責任ある視点で考えていってほしい。

たとえば水際対策だ。複数の派遣会社への外注で積み重ねられた重厚な人員体制で、成田空港から福岡に送り込むほどの広範さでホテルを借り上げて食事を提供して何日もの隔離を施す政策が無期限で進行中だ。だが、そこにいったいどれくらいの予算が投入されるのか、どこかで議論されているというニュースを見ない。

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私は新型コロナ危機初期「第一波」の時から、水際対策の重要性を書いてきたが、常に空港税の増額などの措置を伴った施設拡充を中心に論じてきた。

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現在の政府の政策は、私が論じてきた方向とは全く違う方向で、「水際対策」を行うものだ。

たとえば政府は、「外国人の一律入国禁止」を続行し続けるつもりのようだ。人道的な理由やビジネス上の理由があっても受け付けない、この措置は無期限で続ける、という姿勢である。

だがどうしても日本に入りたい強い希望と合理的な理由があり、そのためには費用負担も辞さず、検査や隔離に伴う費用を全て自費で賄って日本の国庫に負担をかけないと誓う外国人がいても、絶対にダメ、という政策は、本当に新型コロナ対策として合理的か。

日本人について、私のような研究者の例をとろう。われわれにしてみれば、費用対効果の観点から合理性のある費用負担を求められても、それで渡航可能性を広げてくれるのであれば、やみくもに禁止を乱発されるよりも、ありがたい。このままでは、いずれ日本人の地域研究者は壊滅に追い込まれるし、研究開発領域の全般で国際競争力を失っていくことは必至である。

これが岸田首相の目指す「新しい資本主義」の姿か。

・・・そんなことを言っても内閣支持率はまだ高いんだ、日本の有権者の平均年齢が高いのは現実なんだから受け止めるしかないじゃないか・・・、という意見が、政府関係者の本音だろう。

だがそれは、将来世代の視点に立ってもなお、本当に持続可能性のある合理的な政策か。「新しい資本主義」の新型コロナ対策について、もう少し議論があってもいいような気がする。