オミクロン第6波に向けて日本人が知っておくべき4つのこと(前編)

森田 洋之

Rafmaster/iStock

新型コロナウイルスのオミクロン株、市中感染が連日報道されている。

今回は、その来たるべきオミクロン株の第6波に向けて、「今日本人が知っておくべき4つのこと」をお話したい。

要約すると以下になる。

  • ピークはいつ?
  • 弱毒化は本当?
  • 病床整備はどうなってる?
  • まとめ

(なお、私はどちらかと言うと、細胞とか免疫とかそういういかにも医学的なミクロの世界から考える方法(演繹的思考)より、過去の統計など事実から類推する方法(帰納的思考)のほうが得意なので、そちらの方向から考えることを事前にお伝えしておく。)

ピークはいつ?

まず、ピークについて。

いやその前に、そもそもオミクロン株の第6波は本当に来るのか?というところから確認したい。その際に参考になるのが、こちら。

このグラフを読み解くとこれまでの感染がよく分かるのだ。

まず、上の方のグラフを見てみる。

山が5回ある。これが日本で起きた第5波までのコロナ感染だ。

一番右のピンク色が直近第5波のデルタ株。

これでまず分かるのは、日本ではデルタ株(ピンク色の山)も大きな波を超え現在はほぼ終息している、ということ。

もう一つ、このグラフで分かる重要なことは、

「一つの株が一つの波を形成している」

ということだ。

つまり感染力の強い新しい変異株が一つ出現すると、3〜4ヶ月ほどかけて全国に広がり一つの波を形成し、その後収束していく。というパターンが見えてくる。

今回のオミクロン株は世界的に広がりを見せているので、普通に考えれば日本でも今後第6の波を形成すると考えていいだろう。

では、どれくらいの期間でオミクロン株が日本に広がっていくのか?

下の方のグラフを見てみよう。

赤い矢印の通り、全国に広がっていく期間が変異株ごとにだんだん短くなって、短期間に急速に広がっていることがわかる。(PCR検査体制が限定されていた第1・2波は除外)

そもそも、ウイルスというのは変異するごとに

  • 感染力は強くなるが
  • 毒性は弱くなる

ということが一般的に言われている。(「毒性が弱くなる」の部分は後述)

上のグラフを見ると、今回のコロナウイルスも変異を繰り返すごとに感染力が強くなる(短期間に急速に広がっていく)というパターンが見えてくる。

感染力が強くなるので

  • 急速に広がり
  • 同時に感染者の数も増える。

この2つのグラフを見るとそれがよくわかるだろう。

ただ、これはこれまでの話。オミクロン株ではどうなのか?

いまのところ、今回のオミクロン株も世界的に「急速拡大」が報告されている。

たとえば、オミクロン発祥の国と言われる南アフリカ。すでに感染の殆どがオミクロン株の置き換わっていると言われている南アフリカの感染経緯のグラフがこちら。

感染拡大期、つまり山の上昇部分、に注目するとこうなる。

今回のオミクロン株が一番右の波だが、明らかにそれ以前より急峻に感染が拡大している。これを見ると、やはりオミクロン株の感染速度もかなり早くなっていると言えるだろう。(ついでに言えば、それと同じくらい急速に収束に向かっているようにも見える。)

では、日本でのオミクロンのピークはいつなのか?

これまでの日本のパターンは、3〜4ヶ月かけて広まりピークを迎えるのが通例だった。それより早いと仮定すれば、今度のオミクロン株は感染拡大開始から1〜2ヶ月くらいでピークを迎えるのかもしれない。上記、南アフリカのグラフを見てもだいたい1ヶ月位でピークに達している。

日本ではいまちょうど市中感染が出始めたところなので、今を起点と考え1〜2ヶ月後ということは、

ピークは1月末〜2月?

というところだろうか。

弱毒化は本当?

オミクロン株は感染力が強く「急速に広まる傾向にある」ということがわかった。

では、

「ウイルスは変異するたびに弱毒化していく」

という部分は本当なのだろうか? 今回のオミクロン株にも当てはまるのだろうか?

まず、これまでの傾向を見てみよう。

日本における感染者数の推移は、先程のグラフで分かる。

新しい変異株が出るたびに一つの波が形成され、更にその波は大きなものになっているのが分かる。オリンピックの頃にやって来たデルタ株の第5波が過去最多の感染者数を記録したことは記憶に新しいところだ。

一方こちらが、新型コロナによる死者数のグラフ。

過去最大の感染被害だったデルタ株も、実は死者数は減少していたのだ。つまり、あのデルタ株さえ「弱毒化」していたということだ。

では、来たるべきオミクロン株はどうなのか?

ここで参考になるのは、やはり世界で最初にオミクロン株が流行し、すでに収束に向かっている南アフリカ。

その南アの感染者数と死者数のグラフがこちら。

南アフリカのデータを見る限り、オミクロン株の感染者数は過去最高まで増えたのに、死者数はほとんど増えなかったことがわかる。

もちろんこれから増える可能性もないことはないが、感染者数がすでに急速に減少しているので、前回の波(デルタ株)の死者数を上回るまで増えることはまずないだろう。

つまり、南アフリカのオミクロン株はデルタ株より「弱毒化」していたわけだ。

これは、同じく現在オミクロン株が席巻していて過去最大の感染者数を出しているイギリスでも同じ傾向だ。

もちろん、日本でも同じ様に「弱毒化」するかどうかはわからない。

ただ、日本でもデルタ株でさえ弱毒化していたわけで、また南アフリカやイギリスなどオミクロン株感染が先行している国でオミクロン株はデルタより弱毒化していることを考えると、日本のオミクロン株もかなり弱毒で広まっていく(逆に感染者数は増える)可能性が高い。

ということで、結論としては、

  • ピークはいつ?→ ピークは1月末〜2月?
  • 弱毒化は本当?→ 多分本当、でも逆に感染力は高まり感染者数は増える?

そのためにも、相応の医療体制が準備されてしかるべきだ。

では、それに備える我々の側の要因、「医療体制」の方はどうなっているのだろうか。

(後編に続く)