コンビニの日本人店員が「外国人の名札」を着けたら…客の態度に劇的変化
という記事が弁護士ドットコムニュースに掲載されていたが、日本でも外国人労働者が増え始め段々とイギリスを始め欧州のような状況になってきたのであるな、というのが印象である。
以前アゴラでもイギリスの移民問題に関する記事を執筆した。多くの日本人に知られていないことだが、イギリスは日本よりもはるかに早く外国人労働者を導入した移民労働者先進国である。
その大きな原因は、第二次世界大戦終了後に成人の男子労働者が不足したことである。
戦時中は女性を労働に投入することで何とか労働者不足を補ってきたが、戦後復興や、ベビーブームに対処するにはとにかく人が足りなかったので、イギリスの場合は旧植民地から大量に労働者を招聘したのである。
特にその数が多かったのはカリブ海のアフリカ系の人々や、パキスタン、インド、バングラデシュといった南アジア各国からである。
彼らの多くは、紡績や製造業、公共交通機関、医療、航空業界に投入された。単純労働者というよりもどちらかといえば熟練労働者が少なくなかったのである。
しかし旧植民地の出身者と言っても現地で使われる英語というのは、いわゆる植民地の「ピジン英語」で、文法や語彙、訛りが独自でイギリス人には理解ができないこともかなりあった。
また旧植民地というのは階級社会で教育レベルも様々なため、英語がわからない人もかなりいたのである。
しかしながら、とにかく人が足りないので、語学力が不足していたり、イギリスの文化をよく知らない人もどんどん現場に投入された。
そういった語学力不足の外国人労働者であっても働いてもらわなければならない。そこでイギリス人は彼らの言葉が理解できなくても、何とかその意図を汲み取ると言うやり方を身につけてきた。
また、そもそも文化背景が全く異なるので、イギリス人が求めるものを彼らに要求しても理解されないことが多い。
したがって非常に面白いのがイギリスの店やホテルなどでイギリス人を観察していると、従業員に対して決して無理な要求をしないということである。
複雑なことをお願いしても、現場にいる人が外国人だとこちらが言っている意味が分からないことが多い。オペレーションやサービスに何らかの間違いやミスがあっても、言葉の違いや文化の違いで起こってしまったということが多く、意図的ではないことが非常に多い。
そのことで怒ってしまったりクレームを出しても、サービスをしてくれる人が気分が悪くなり品質がより下がってしまったり、最悪の場合は対処してもらえなくなることが多いので、決して怒らずに相手を丁重に扱うと言う行動が一般的になっている。
さらに日本人にとって非常に参考になるのが、そういった外国人に対してイギリス人は決して単刀直入にクレームを入れるのではなく、相手の面子を保った状態で自分の要求を通するのだ。
非常に遠回しだが丁寧かつ理論の通った言い方をする。あくまでエレガントかつ、親切、そして丁寧に、決して感情的にはならず、
例えば、
「あなたのためを思って私はこれを提案していますが、いかがでしょうか?」
「このようにするとより良い結果が得られるかもしれませんね」
「こうしてくれると私はとても嬉しいのです」
という調子だ。
これなら外国人労働者は自分にとっても「そうか、お客さんがこうしてもらえるといいんだね」と新たな学びになるし、面子も保てるのでどちらにとっても良い結果となる。
今後外国人労働者がどんどん増えていくわけだが、彼らによりよく働いてもらい、自分も良いサービスを受けて得をしたいのであれば、このようにイギリス人のようなちょっと気の利いた言い方を活用すすることは大いに参考になるだろう。
ただ単にクレーマーになって延々と文句を言ったり、相手が外国人だからと何も言わないのではなんの発展もない。
外国人と日本人の間でどうしたらお互いに得になるかという落としどころを見つけるのが多様性のある社会のコツだ。