こちらもきな臭くなってきた 岸田 VS 安倍

岸田政権で発足以来初めて内閣支持率が下がり目となってきました。1月22日の毎日が2ポイントマイナスの52%、1月28日の日経が6ポイントマイナスの59%となっています。1-2週間後にNHK、読売の調査が続く予定ですが、3-8ポイントぐらいの下落はあるかもしれません。

この下落は新政権にとっては洋の東西を問わず、何処でも傾向としては現れやすいものです。概ねハネムーン期間と称される100日間は国民や市民の期待度も高いし、マスコミもあまり強く否定しません。野党もお手並み拝見という名のあら探しをする時期です。その間、国民は「今度の政権、いいじゃないの」と思ってしまうのです。しかし、この「いいじゃないの」は概ね比較論で粗の見えた前政権と比べての話でそのうちに「これ、機能していない」「言うこととやることが違う」という声が徐々に盛り上がるのが支持率の特徴とも言えます。

では岸田氏はこれから始まる政権支持率の下落サイクルに歯止めをかけ、あわよくば上昇に転じる手段はあるのでしょうか?

先日、このブログで「佐渡の金山、岸田の金星」と申し上げました。仮に世界遺産に登録されれば岸田氏の評価は上がると思います。なぜ、世界遺産でそうなのか、といえばそこに至るには韓国およびその背後にいる中国を説得する必要があり、冷え切った日韓関係の中でそこを通すのは相当の外交手腕が求められるからです。つまり通常の世界遺産のプロセスの比ではないのです。


佐渡に関して安倍氏と高市氏が吠えました。「挑戦もしないのはどんなものか」と。岸田氏は内部の声に押されたのです。聞く力のある岸田氏が世の声のみならず、政敵ともいえる安倍/高市派に屈したとも言えます。ただ、安倍/高市氏は佐渡の金山が世界遺産登録される可能性は低いとみているはずで「岸田さんじゃだめだな」とする作戦ではないかとみています。

緊急事態宣言についても高市氏は「ありうる」と述べ、岸田氏は「考えていない」と述べています。この明らかに違う同じ党内の意見が面白おかしく伝えられているのは安倍氏側がマスコミを利用しているとも思えます。「アベノマスク」に在庫8千万枚、希望数2億8千万枚と3.5倍の人気ぶりに当の安倍氏はしたり顔でどう見ても政治を外野からエンジョイしているように見えます。更に産経には安倍-菅関係が接近し関係改善を示唆する記事があります。これは何か、といえば自民党内の強烈な派閥競争そのものであり、自民が本当に二分するぐらいの関係になりそうな気配を感じるのです。

もう一点注意深く観察したい点は自民と公明の関係が薄くなってきたことです。これは例の10万円配布問題が根底にありますが、それをきっかけにした温度差を双方が埋められなくなっているのでしょう。そもそも自民と公明の関係は相思相愛というより見合い結婚の熟年カップルで、夫婦間の意見相違が生じているようなものです。この背景に自民に維新への浮気心が出てきたからかもしれません。

夏の参議院選に向けて各党動きが始まっていますが、正直、立民は共産との関係をどうするか明白にしておらず連合はおかんむりです。その中、菅直人氏はこのところ3連発で粗相をしており、結局、自民党が余力をもって勝利する流れとなるのでしょう。但し、冒頭の内閣支持率の下落が小幅にとどまるかは見通せません。

まず、国内についてはコロナ対応が菅政権の時に比べぱっとしないことが気になります。むしろ都道府県知事が独自のやり方を次々と提示し、ルールがどんどん変わるため、国民がさっぱり理解できなくなっています。つまり政権のグリップが効いていないとも言えます。

次に外国人の入国について世界中から批判が強い「鎖国」を2月末で解除するのか、その場合、どのように「開国」するのかが注目されます。学校が4月からであることを考えれば8割の確率で開国するでしょう。しかし、それに向けた国内対策はできているのか、これは相当準備しないと無理です。岸田氏は小池氏とも距離感があるように見え、岸田氏に論理武装ができるのか、ここも試練となります。

外交についてはジョンソン首相来日が中止となったため、バイデン氏の春の来日を待つ形となります。北京五輪が終わり、北朝鮮は危険な花火を飛ばし、韓国は大統領選が迫ります。フランスが大統領選で動けず、英国はジョンソン首相が辞任に追い込まれる可能性があります。ドイツは何処を向いているのかわからずというのが欧州事情。中東もトルコも安定しません。日本はその中で落ち着いているのですが、次世代に向けた大きな軸がないのです。これは困ります。

たぶん、安倍氏はこの状況にイライラしている、だから高市氏をうまく使いながら自分のメッセージを発しているとみています。つまり高石氏は安倍氏の広報担当ともいえるのです。この戦いは始まったばかりです。岸田政権はリベラル色が強く、幹事長に茂木氏を持ってきたことでなお更保守派の反発を誘っているとも言えます。そもそも茂木氏は人望があまりない中でなぜ、あのポジションだったのか、いまだに分かりません。

いずれにせよ、私は自民党が二分裂してもおかしくないと思っています。いや、分裂して公明と連立しなくてもよい政権を作るのも一つの手かもしれません。日本の政治は安定していることが取り柄ですが、世代交代も進み、経済社会も大きく変質化している中で小手先の反論をして内部闘争をするぐらいなら党を割ってみよ、と私は安倍氏に申し上げたいところです。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2022年2月1日の記事より転載させていただきました。

会社経営者
ブルーツリーマネージメント社 社長 
カナダで不動産ビジネスをして25年、不動産や起業実務を踏まえた上で世界の中の日本を考え、書き綴っています。ブログは365日切れ目なく経済、マネー、社会、政治など様々なトピックをズバッと斬っています。分かりやすいブログを目指しています。