「多作」は天才に勝つ弱者の戦略である

黒坂岳央(くろさか たけを)です。

世の中には天才としか言いようがない才能の持ち主がいる。才能の勝負となれば、凡人は天才には敵わない。しかし筆者が常々思っていることの一つに、「多作は天才を超越する」というものだ。天才かつ多作家となると、これはもう手も足も出ないと思えてしまうが、その実、凡人でも多作の活動でチャンスを掴めると思っている。

多作とは、天才ひしめく芸術やビジネスの世界において、凡人が生き残るための弱者の戦略と言えるのではないだろうか。エジソンは「成功の前にはゴミの山がある」といっているように、1つの成功の前には、大量の失敗がある。失敗を恐れずとにかく成果物を大量に出せる人は強いのだ。

多作家だった歴史の偉人

美術家として誰もが知っている、ピカソは15万点もの作品を残した。音楽家のモーツァルトは500を超える作曲をする多作家であった。また、漫画家の手塚治虫は最大7本の連載を描いていたという伝説が残っている。

パブロ・ピカソ Wikipediaより

だが、どれだけ芸術に傾倒する人でも、ピカソの作品の中で知っているものはかなり数が絞られるはずだ。それはモーツァルトも手塚治虫も同じである。

つまり、多作といっても作品のすべてが大成功したというわけではなく、一部のヒット作品が名声を轟かせたという事実が見えてくる。

「当たりくじ」は多作の中に隠れている

これはそのまま、我々ビジネスマンにも当てはまるだろう。とにかくたくさんの作品を作り、その中でたまたま出てくる大当たりを探して日々多作に励むということだ。

もちろん、考えなしにやり続けても成果は得られにくい。ビジネスにおいては顧客ニーズをリサーチしたり、効率性を求めて戦略を練ることは必要だ。だが、どれだけ準備を尽くしても最後には多作であることが絶対不可欠となる。

筆者はビジネスをしていてこれを痛感させられる。この原稿は半分趣味のような位置づけで、日々考えたことなどを整理する意味も込めてアウトプットをしている。自分は有名人でもないし、社会に強い影響力も持っていない単なる弱者に過ぎない。

しかし、書いた記事を有名人が取り上げてくれたり、すさまじいアクセス数を誇るサイトで紹介されることがきっかけでヒットし、たくさんのアクセスを取れることがある。そこからビジネスチャンスだけでなく、良い人との出会いを得たこともある。また、気まぐれで書いたテーマがきっかけで雑誌インタビューのお声がかかったり、ビジネス講演への登壇の依頼を受けたり、テレビ番組出演のオファーを頂くこともある。だが、大多数の9割以上の記事は、そのような目に見えて大きい規模の反響はない。

どんな仕事でも、運命的なビジネスマンとの出会いやビジネスチャンスは、多作の中に偶然飛び出してくる当たりくじのようなものだ。当たる確率を高めるためには、確率論的に多作であることは有利になる。

仕事は多作を通じて洗練される

また、仕事の成果物のクオリティも多作を通じて洗練されるのは、誰しも経験があるのではないだろうか。

新人の頃はとにかく、仕事の質が低いところから始まる。ミスは多いし、時間もかかる。出来上がった成果物もかゆいところには全然手が届かず、上司の指導を受けたり、自分で勉強しながら大量に仕事をこなしていくことになる。だが日々、仕事をこなす中で、仕事の熟練度も高まり洗練されていく。仕事といえども、結果という成果物、作品を生み出す行為なので、多作の戦略が活きるだろう。

多作の有用性は今も昔は変わらない。仕事や芸術活動の多くは、技術職であり人間は知識と熟練を経て洗練されていく性質を持っている点では同じだからだ。

不器用で要領が悪く、何事も時間もかかってしまう。そんな弱者こそ、多作を経て一日も早く技を磨き、マーケットの当たりくじを引くためにたくさんの仕事をこなしていこう。

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ビジネスジャーナリスト
シカゴの大学へ留学し会計学を学ぶ。大学卒業後、ブルームバーグLP、セブン&アイ、コカ・コーラボトラーズジャパン勤務を経て独立。フルーツギフトのビジネスに乗り出し、「高級フルーツギフト水菓子 肥後庵」を運営。経営者や医師などエグゼクティブの顧客にも利用されている。本業の傍ら、ビジネスジャーナリストとしても情報発信中。