コロナに対する日本と首相の感度

報道をみているとコロナはそろそろピークという声が増えてきました。私も1月末から2月初めではないか、とだいぶ以前に申し上げたのはあくまでもデータ上の推移で日本だけ世界と違う形にはならないという前提で考えたものです。

ひょっとするとこの週末でピークを打った気もします。予想通り10万人にヒットしたところです。これが当たろうが、まだ増え続けるにしてもいづれピークは迎えます。

問題はそこからです。菅前首相が8月25日に「明かりははっきりと見え始めている」と発言してから国全体がそれを「認知」したのが2-3か月後というケースを想定すると仮に現在がピークアウトであったとしても多くの専門家や都道府県知事は「まだわからない」「まん延防止を我が県にも」「まん延防止はあと3週間延長して」といった声が続々と出ており、仮にそれらの声を国が「わかりました」といって受け入れるのでまん延防止は3月初旬から中旬まで続くことになります。

日本がコロナ対策について異様に厳しく、先進国では最も厳しいルールを強いているわけですが、その理由はいくつかあると思います。1つは島国として外敵に対して畏怖していること、2つ目に日本人の完璧主義と保守性、3番目に極度に進んだ民主化により物事が決められなくなっていること、4番目に他の先進国に比べ異様に遅れたITの展開が考えられます。

1つ目の島国については英国が同様なのですが、同国はトンネルで欧州大陸とつながり、社会政治経済が密接に大陸とリンクしているため、人の往来という点では島国とは言えません。

むしろ、ニュージーランドなどが日本に近く、先日海底火山の爆発で被害が大きかったトンガは感染者が2人発覚しただけでロックダウンとなりました。大陸は外敵と戦うのに対し、島国は外敵には扉を閉めるという手法を取りやすいのです。

2つ目の日本人の完璧主義と保守性は説明するまでもないと思います。特に保守的行動をとるのが都道府県です。なぜなら1人でも重篤な患者が出れば「どうするのだ、国は責任を取るのか」と噛みつき、責任転嫁を図るからです。

とすると、誰一人問題がなく、かつ、一定期間安心でき、かつ、周りの都道府県も落ち着いているという状況にならないと誰も「終息宣言」「安全宣言」など出さないのです。

3つ目に極度に進んだ民主主義です。最近、民主主義の話題がちょくちょく出ますが、日本に於ける民主主義とは憲法で保障されたありとあらゆる自由を国民に約束し、我儘を許すこととも言えます。

どれだけ自由な憲法なのかはここでは書ききれませんが18条、19条、20条、21条、22条、23条、29条、31条、33条、34条、35条、36条、37条、38条、39条とざっと見たところでもこれだけの項目で自由が約束されています。

これは逆に言えば政府は踏み込めないし強要も出来ないわけで、よい時はよいのですが、コロナのような非常事態には非常にやりにくい憲法なのです。言い換えれば国家としての縛りが何もないとも言えます。

4つ目のITの遅れについても言うまでもないと思います。日本はITに強いと思っているのは大違い。

「富岳」がどれだけ優れていてもそれは「富岳」を開発したごく一部の秀才の成果であり、それを国家や企業が水平展開したり国民がそのメリットをどう得ているかを知ることもあまりありません。量子コンピューターのそもそもの技術も日本発なのに水平展開は日本以外で行われています。

そして未だにファックスを使い、スマホを持っているのに電話とテキストとカメラしか使えない人が多く、スマホを利用した国民/市民サービスが十分出来ません。

では様々な対策を打ち出す政権との関係はどうでしょうか?菅氏と岸田氏の違いは何か、と問われれば私はズバリ、菅氏は実務者、岸田氏は調整者だと考えています。実務者の菅氏はどうやったら感染拡大を抑えられるか、より現実面に沿い、同じ実務畑の河野氏をワクチン大臣にし、西村氏も矢面に立ちながらもよくやったと思います。

一方、聞く力をアピールする岸田氏は本人の強いステートメントはほとんど無いか、あっても朝令暮改です。つまり方針がころころ変わる、理由は「いろいろな意見を聞くから」で結局これは政府方針がぶれまくっているともいえるのです。コロナ関連の閣僚も弱いし、発信力はほとんどありません。西村氏のように日々インタビューに登場したということはなく、堀内氏など名前すら忘れていました。

内閣総理大臣指名時の岸田首相 首相官邸HPより

私の最大注目点は2月中旬にも決定しなくてはいけない「鎖国」をどうするかです。国外から厳しい批判にさらされており、その圧力に屈して開国すると思いますが、「国内攘夷派」からその押し返しは必至であり、ここでもブレる可能性がないとは言えません。

こう見るとコロナ一つにしても日本の独自性があらゆるところにみられます。我々は今回のケースを糧に出来るのか、将来また同じようなことを繰り返すのか、外国に住む日本人として憂慮しないわけにはいかないのです。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2022年2月8日の記事より転載させていただきました。

会社経営者
ブルーツリーマネージメント社 社長 
カナダで不動産ビジネスをして25年、不動産や起業実務を踏まえた上で世界の中の日本を考え、書き綴っています。ブログは365日切れ目なく経済、マネー、社会、政治など様々なトピックをズバッと斬っています。分かりやすいブログを目指しています。