パリ国立オペラ座バレエ、クリスタル・パイト”ボディ・アンド・ソウル”。
2019年10月に、オペラ座にパイトが振り付けた全幕作品。
パイトといえば、その数年前に初めてオペラ座に作ってくれた”シーズンス・カノン”が傑作。彼女はこの作品でブノワ賞とった。振付も素敵だったけどヒリター&ヴィヴァルディによる音楽の魅力も抜群だった。
それと比べるとどうしてもちょっぴり満足感はないけれど、これはこれでなんか妙に面白いというか興味深いな~。って、初演時にも思った。
人間を一度無機質なセルに変換して、それに再び有機性というか魂を与える、みたいなイメージの、彼女独特のセンスはとても素敵。
一幕ラスト、音楽が波の音から人間の声に変わる部分で、その魅力が炸裂する。
一幕、二幕のそこここで感じる、ダンサーの体のフォルムの美しさを生かした動きや静止もチャーミング。そのまま、ロダン美術館に飾りたい造形美。でも、二幕のいろんなパ・ド・ドゥは、全体的に役不足というか、全員が動くシーンの方がずっといい。ここ、アルゲリッチが弾くショパンのプレリュードの方が、録音とはいえ力でまさってる(笑)。
そして初演時に見て、驚くというか強い印象を受けた三幕。舞台セットの輝きがほんっときれい。美しいセットと照明、SF的なダンサーたち、音楽に、違う世界に連れて行かれる17分間。
各幕で個別の作品としてかけられるくらい、全くスタイルが違うのだけれど、タイトルが示すテーマは一貫してるのでしょうね。
一幕は、セルになって操られる体。二幕は、魂を持った人間自らの動き。三幕は、んー、人間が進化しすぎ再びセルとなり体も昆虫化して魂を失ったいるところに、一人だけ、プリミティフな人間の体と魂を持った存在が現れることにより、昆虫化した人間が、少し、かつて人間だった頃の体と魂を取り戻す、みたいに感じないこともない。
私のバレエ経験の中では、ロビンスのグラス・ピーシーズ→フォーサイスのパ・パーツ→この作品というラインで、ある種の進化を感じる。
初演時に比べ、ダンサーたちがいまいちな中(アレッシオはこの作品で引退してしまったし、リュドミラ、リディー、フランソワもいないし…)、シモン&マリオンがやっぱり輝く。特にシモン!伸び、ため、そしてキレが相変わらずお見事。彼のソロ、少なすぎる。
こちらは、初演時の感想です。
2年前に見た時より余裕もって見られたからか、なんかいろいろ深く考えながら楽しむ。もちろん最後は、会場中からヒューヒューヒュー&ブラヴォーの嵐。
パイト、オペラ座の2作品しか見たことない。もっといろいろ見られる機会がくるといいな。
久々のピカピカお天気週末のマチネ。ガルニエのフォワイエは太陽の光を浴びて、三幕のセットに負けないくらいキラッキラ。
空気に甘い香りを感じるようになってきたし、春までもう一息かな。
編集部より:この記事は加納雪乃さんのブログ「パリのおいしい日々4」2022年2月7日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は「パリのおいしい日々4」をご覧ください。