ブラック企業アナリストの新田龍さんのTwitterアカウントは面白くて、ブラック企業のよくある行動をつぶやいてくれています。下記は最近つぶやかれたものです。東京は雪で交通機関がマヒしやすいわけですが、それでも会社に来るように命じる企業に向けたものでしょう。
クスっと笑えながらも、このブラック企業の行動原理が私にはよく分かるなぁと思うのです。私も少し前に雇用が必要なビジネスをしていたのですが、正社員・アルバイトともに採用しておりました。アルバイトはまだしも、正社員についてはできるだけ多くのことを任せたくなるし、法律の範囲内ならいくらでも働いてほしいと思っていました。
正社員は経営者から見れば定額使い放題の契約に等しい
なぜ正社員にだけできるだけ多くのことを任せたくなるのでしょうか。それは正社員という契約内容が関係しています。日本独特のこの正社員という制度は皆さんご存知の通りです。無期雇用で仕事の範囲が決められていません。つまり週休二日だとした場合、週に5日間働くことになります。経営者側から見れば、この5日の間、目一杯労働力を活用したいと考えるでしょう。
例えばある正社員の担当している仕事が終わっていたら、また他の仕事をお願いします。常に作業していると、正社員の時間をフルに活用できます。もし暇をしていたり、何もしていない時間があったとしても、経営者側が支払う給与は変わりません。であれば、コピーでもお茶くみでもなにかさせておいた方がいい、経営者がそう考えるのも自然でしょう。
交通機関がマヒしてでも出社しろという会社も、同じような考え方ではないかと思います。無期雇用で週5日働かせ放題の契約をしているのだから、正社員に働かせないと「損」をすると。だから、雪だろうが台風だろうが、とりあえず出社して仕事をさせるのでしょう。そして、一応気遣っているフリをするために、すでに交通機関がマヒしている時に帰宅を許可するなどしているのだと思います。
最近はリモートワークも増えていますが、リモートワークの補助を行うサービスとして、社員が家でパソコンをいつログインしたのか、何をしているのかを監視するようなものもでてきています。正社員を最大限活用するために、リモートワークでもサボることを許さないという、会社側の考えが透けて見えます。
正社員だけが「働かせホーダイ」
正社員に対しては時間内でフルに働いてほしいというのが経営側の考えかと思います。しかし、これがフリーランスだとどうでしょうか。
同じ仕事をフリーランスに任せたとした場合、発注していた仕事が終わったから他の仕事を任せる、ということを簡単には行わないでしょう。何を発注し、それをいつまでにどのような形で納品するのか、そして支払いはどのようにするのかが業務委託契約等ではっきりと決まっています。さらに他の仕事を任せれば契約外のことになりますから、さらに出費をするなら会社側も発注するでしょう。しかし正社員のようにポンポンと任せられません。
ブラック企業だけでなく、一般的な企業でもこの根本的な考え方というのは変わらないはずです。正社員がこのように「働かせホーダイ」になってしまうのは、何をやらせてもいいというフリーハンドを企業側が握っているからです。それこそいきなり転勤させたり、部署異動させるなど、大企業であっても行われています。働かせホーダイの正社員だからこそ、できることです。
この正社員という制度をなんとかしない限り、ブラック企業はなくならないと思います。ブラック企業からすれば、お上から注意されない限りはいくらでも使いホーダイです。アルバイトだったらすぐに辞める事もできるし、幅広い範囲の仕事を任せられません。他社やフリーランスに外注するのも、契約以上のことはまずできません。
正社員という制度を一番喜んでいるのは、実はブラック企業ではないでしょうか?