製鉄技術がない時代のエジプト・ツタンカーメンの鉄剣はどうやって作られたのか

野北 和宏

千葉工業大学の研究者がその謎を解明

クイーンズランド大学では2月21日月曜日から2022年の第一学期が始まります。今年も、3つの授業を受け持っています。そのなかで、”Net Shape Manufacturing”のコースでは、鋳造・凝固(Casting/Solidification)と鍛造(たんぞう:Forging)の講義を受け持っています。今回の動画は、その鍛造に関するものです。

先日、千葉工業大学から「ツタンカーメンの鉄剣の製造方法と起源の特定に成功」という以下のようなプレスリリースがありました。

千葉工業大学地球学研究センター及び惑星探査研究センター所長の松井孝典率いる研究チームが、エジプト考古学博物館において、ポータブル蛍光 X 線分析装置を用いてツタンカーメンの鉄剣の非破壊・非接触での化学分析を行った結果、鉄剣が低温鍛造により製造されたこと、エジプト国外から持ち込まれた可能性があることを明らかにしました。この研究成果は、2月11日付の米国科学雑誌「Meteoritics and Planetary Science」電子版に掲載されました。

そこで、該当の論文を読んでみました。

古代オリエント世界で栄えたヒッタイト帝国(紀元前15世紀~前13世紀頃)は、鉄の製造技術を独占することで軍事的優勢を得たとされているそうです。それ以前には、世界にはまだ鉄の製造技術はなかったと考えられている一方で、エジプトのツタンカーメン王(紀元前1361年~1352年)の墓から、鉄剣が発見されたことは大きな謎であったそうです。

なぜなら、当時の技術では鉄が溶ける温度、1400℃以上に熱することもできなかったでしょうし、鉄を溶かさず「鍛造」でつくる「低温製鉄法」いわゆる「固体直接還元法」は900℃程度ですが、その起源は古代中国だとされています。

では、どうやって鉄剣を作ったかと言うと、なんと鉄とニッケルが成分の隕石を950℃以下の「鍛造」で作ったと言うことらしいです。鉄剣が隕石でできていることは既にイタリアの科学者が2016年に解明したそうです。

千葉工大の研究者は、ポータブル蛍光x線装置を使って、元素の分布を調べて、製造方法を950℃以下の鍛造であることを突き止めたと言うことです。

同僚の講師に、興奮してこの話をしたら、???となっていました。10分ぐらい説明の後、「ツタンカーメン」じゃなくて「トゥゥータァーンカーメン」ね、と。僕の英語の発音があまりに本当の発音とかけ離れていたようです。

ちなみに隕石(meteorite)は「ミーティアライトゥ」と発音するらしいです。

動画のノギタ教授は、豪州クイーンズランド大学・機械鉱山工学部内の日本スペリア電子材料製造研究センター(NS CMEM)で教授・センター長を務めています。