アパホテルのどちらに転んでも「負けない」経営戦術

コロナ禍でホテル業界は売り上げ減少の大きな打撃を受けています。そのような中で、アパホテルは今も次々と新しいホテルを全国各地に開業しています。

アパホテル 新宿歌舞伎町タワー
出典:Wikipedia

しかも驚くべきことに、アパグループの直近の決算は、グループ連結売上高が917億円(前期比1.4%増)で、経常利益は75億円(前期比645.5%増)と、大幅な黒字決算となりました。

コロナ禍で黒字を確保している宿泊施設運営会社は聞いたことがありません。

その理由の1つとして挙げられているのが、新型コロナ感染者向け宿泊療養施設としての自治体の借り上げ需要の取り込みです。アパホテルの営業が停止されている施設は、需要停滞で休業している訳ではなく、感染者の施設として運営されているからなのです。

自治体がまとめて借り上げをしてくれることにより、単価は低いものの安定した宿泊収益となります。

他のホテルも真似をすれば良いと思ってしまいますが、ある程度の規模が無いと、受け入れ施設としての基準を満たせないようです。中小のビジネスホテルでは対応できない需要なのです。

また、コロナ特需だけではなく、フロントの機械化を進め人件費を下げる。あるいは、宿泊価格を大胆に変更し、収益を最大化させるといった企業努力を続けていることも、収益を拡大するのに貢献しています。

これからの日本国内のホテル業界は、滞在すること自体が目的となるリッツカールトンのような外資系の高級ホテルと、宿泊の拠点として活用する低価格のビジネスホテルに大きく2極化していくと思われます。

稼働率の低下が続き、撤退していくビジネスホテルが増える中で、黒字を確保しているアパホテルは市場シェアを高めているのです。

コロナウィルス感染拡大が続けば、このような特需ともいえる宿泊需要によって利益を確保できます。逆に、コロナ渦が収束すれば、今度は莫大な観光需要が復活することになります。

どちらに転んでも、収益を確保し、マーケットのシェアを高めていくことができる。何とも盤石な経営戦術です。


編集部より:このブログは「内藤忍の公式ブログ」2022年3月6日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。