プーチン政権は報道規制に必死:ロシアで独立系の報道メディアが次第に減少

ドシチ放送最終日のスタジオ RUSIA, INDEPENDIENTES MEDIOS CADA VEZ MENOS.31-03-2022

プーチン政権は報道規制に必死

ロシアで対ウクライナ紛争について、ロシア通信規制当局は「戦争」「侵攻」「攻撃」といった言葉は情報メディアで使用するを禁止した。同様に「ロシア軍がウクライナで民間対象物を標的として攻撃している」と表現することは偽った情報だとして罰則が適用されることになっている。唯一正しい情報は国営通信から提供される情報であるとした。3月に入ってこの偽った情報を提供した場合は懲役最高15年の刑が課せられることになった。

そうはいっても、実際にはウクライナの都市で民間住宅がロシア軍の砲撃によって破壊されているビデオは国際的に人々が目にするようになっている。それをロシア政府は検閲してロシア市民が目にしないようにすることに躍起となっている。

人気あるテレビドシチが配信停止となった

この影響から独立系の報道機関が厳しい監視下におかれ、報道が出来なくなるケースが増えている。それに反動して独立系のノバヤガゼタ紙(Nóvaya Gazeta)は2月25日付で「我々はウクライナを敵だとは認めないし、ウクライナ語を我々の敵の言語だとも思わない」と発行責任者デミトゥリ・ムラトウ氏が述べたことを同紙は掲載した。(2月25日付「ドイチェ・ヴェレ」から引用)。

またその前の2月19日には、ノバヤガゼタ紙、オンラインテレビのドシチ(Dozhd)そしてラジオのモスクワのこだま、それに加え他7つの独立系のメディアがロシアの砲撃によってウクライナ市民が死亡したことを報じたことに対しロシア通信規制当局はその情報は偽りであるとして、それを取り消すように命じた。それに従わない場合は通信網へのアクセスを制限し最高500万ルーブル(630万円)の罰金を課すと伝えていたことが明らかにされた。

いずれも同当局の忠告を無視した。まずドシチとモスクワのこだまが配信停止を命じられた。後者は1990年に設立された政府系に近いガスプロムメディアに属しているラジオということで、これまでどうして政府を批判出来ていたのか不思議だとされていでいた。

一方のドシチの場合は2010年から放送が開始されていたが3月3日をもって閉鎖となった。ナタリア・シンディエバ氏が中心になって創設されたテレビ局だ。

彼女はもともとモスクワの社交界のダンシング・クイーンとして良く知られていた女性だった。プーチン政権を批判して常に真実を報道することを心がけて人気を得ていた放送局であった。しかし、政府からの弾圧で彼女の家、婚姻、健康、身の安全とこれらすべてを犠牲にせねばならなかったそうだ。

最近は報道にもかなり規制が加えられていたが、24時間放送を続けていた。野党党首アレクセイ・ナワルニー氏が毒を投じられ、そのあと拘束されたことに市民が抗議した内容の報道には1100万人の視聴者をドシチは記録したという。報道網の規制を受けてからはYou Tube中心に報道していたが1000万から2500万人が常時視聴していたそうだ。(3月7日付「ディアリオ・エス」から引用)。

例えば、ドシチでニュースアナウンサーだったひとりはウクライナでロシア軍によって砲撃を受けているキエフ、マリウポル、レオポリスで公務員やジャーナリストにインタビューして報道したことなどは国営テレビでは絶対に報じないことだと指摘した。

歪んだ情報が真実だと思うようになっているロシア市民

ネットによる独立系メディアの配信はロシアでは停止となっているがVPNを利用して見ることができる。

ロシアの独立系調査機関レバダ・センターが指摘しているのは、ロシア住民の半数がテレビで報じられる内容を信じていることだとしている。即ち、独立系の報道機関が減少して行くことからロシア国民の多くが歪んだ情報が真実だと思うようになって来るということだ。例えば、ロシアでは親ロシア派のドンバス地方、アゾフ海沿岸都市、それ以外にロシア軍が戦略的に標的としている都市を限定して砲撃していることしか報道しない。

また同胞国であるウクライナでネオナチが義勇軍として加わっているが、その数が次第に増えているのを欧米が支持していることにロシア国民は理解できないとしている。この点は確かなことで、逆にそれは欧米では隠されて十分に報道されていない。