たしか「課長島耕作」だと記憶しているが、島耕作が「君」と呼ばれて憤る場面があった。
電車内で口論になった男性に「君」と呼ばれて、「上司でもないのに君と呼ばれたくない」というような設定だったと記憶している。
さらに、人事部にいる同期から「島君」と呼ばれて、同期から「君」呼ばわりされるのは不愉快だと言い返す場面もあったと記憶している。
これが一般的な常識であれば、私たちは安易に「君」呼ばわりすることを慎むべきかもしれない。
以前、旧日本興業銀行本店に勤務していた女性と話す機会があった。
彼女が、「三木谷君は・・・」と何度も口にするのを聞いて、私は大きな違和感を覚えた(楽天の三木谷社長は新卒で旧日本興業銀行に就職している)。
彼女の方が三木谷社長より入行年次が先だったのかもしれない。
しかし、私が在籍していた旧日本長期信用銀行では入行年次も年齢も共に上の女性行員からも「さん」で呼ばれていた。
20歳近く上の女性行員も、一応「荘司さん」と呼んでくれた。
入行年次が下の人物を「君」呼ばわりするのが自然なら、私は岸田総理を「岸田君」と呼べることになってしまう(笑)。
岸田総理は私より年齢は上だが長銀の入行年次はひとつ下だからだ。
このように考えると、やはり安易に「君」呼ばわりするのは危険だと考える。
とりわけ、一般職で入った女性社員が総合職で入った男性社員を「君」呼ばわりすることには、個人的に大きな違和感を覚える。
地域限定の短大卒や高卒の一般職の女性と、全国どころか世界中の転勤を前提とした一流大学卒の男性総合職社員では入社の難易度も違えば責任の重さも違う。
男女差別をするつもりは全くないが、総合職に対する“ほんの少しのリスペクト”がある人の方が奥ゆかしさと気配りを感じて清々しい。
「君」呼ばわりが極めて自然なのは、学校などでの同窓生の間だろう。
今はどうかわからないが、私の年代だと男性は「君(くん)」女性は「さん」で呼ばれるのが一般的だった。
卒業後長年月経った今でもそのように呼び合うのが自然だし、しっくりくる。
昔の運動部や独身寮の先輩からも「君」で呼ばれた方がしっくりくるのだが、(「君」呼びの危険性を知ってのことか)今では「さん」で呼ばれることがほとんどで、少し寂しい気持ちになったりもする。
いずれにしても、「君」呼びは社会常識的にかなり危険であることは間違いない。
課長島耕作のように怒り出す人物も少なからずいるかもしれないから(笑)
編集部より:この記事は弁護士、荘司雅彦氏のブログ「荘司雅彦の最終弁論」2022年5月3日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は荘司氏のブログをご覧ください。