遊んで儲けることは「悪いこと」なのか?

世の中の価値観というのは、時代と共に変わっていきます。

マネックス証券が創業してしばらくした2000年代半ばだったと思います。アルバイトに来ていた学生さんが就職活動で、みずほ銀行とヤフーから内定をもらい、親に相談したら「ヤフーって何?」と、猛反対されたという話を聞いたことがあります。当時ヤフーはまだ知名度のあまり高くないベンチャー企業のような存在でした。

FangXiaNuo/iStock

あるいは、ユーチューバーは、今でこそ子供の憧れの職業ですが、少し前まではいかがわしい人たちの集まりだと思われていました。

自分自身をブランド化して、遊ぶように自分がゲームをしたり、買い物をしたりして、その動画が価値を生み出し、マネタイズされていく。

これは、労働とは「汗水垂らして苦労して苦痛から得られるもの」という従来の価値観では、理解できない世界です(もちろんユーチューバーにも激烈な競争があり、影では大変な苦労もあることは理解しています)。

先月、ワイン仲間から教えてもらったのは、STEPN(ステッピン)と呼ばれる歩いて稼げるNFTと暗号資産を使ったサービスです。

NFTスニーカーを購入し、それを使って動いた距離に応じて暗号資産(GST)を得ることができます。GSTはビットコインや現金に交換することも可能です。

歩くだけでお金が稼げると聞くと、怪しい話と思うかもしれません。確かに、まだ立ち上がったばかりですし、いわゆるポンジ・スキーム(ネズミ講詐欺)かもしれません。

あるいは、システムがサスティナブルに維持できず消え去っていく、一時のブームに終わるかもしれません。

将来、購入したNFTスニーカーの価値がゼロになれば、投資としては無駄になってしまいます。

そんなリスクがあるのは承知の上で、早速NFTスニーカーを購入して、見よう見まねで始めてみることにしました。

このような新しい世界を、はなから否定することは簡単です。しかし、好奇心を持ってやってみることで、経験値を上げ、より豊かな人生につながると思ったからです。

インターネットも暗号資産も世の中に生まれた直後の黎明期は、キワモノ扱いでした。でも、今では誰でも知っています。

STEPNがどこまで広がるかは未知数ですが、NFTやメタバースといった分野は、これからインターネットや暗号資産を同じような経緯をたどっていく可能性が高いと予想しています。


編集部より:このブログは「内藤忍の公式ブログ」2022年5月7日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。

資産デザイン研究所社長
1964年生まれ。東京大学経済学部卒業後、住友信託銀行に入社。1999年に株式会社マネックス(現マネックス証券株式会社)の創業に参加。同社は、東証一部上場企業となる。その後、マネックス・オルタナティブ・インベストメンツ株式会社代表取締役社長、株式会社マネックス・ユニバーシティ代表取締役社長を経て、2011年クレディ・スイス証券プライベート・バンキング本部ディレクターに就任。2013年、株式会社資産デザイン研究所設立。代表取締役社長に就任。一般社団法人海外資産運用教育協会設立。代表理事に就任。