「ディズニー・プレミアアクセス」が暗示する未来

東京ディズニーランドと東京ディズニーシーの違いがよく分からないくらいのディズニー音痴ですが、「ディズニー・プレミアアクセス」という新サービスには、何か引っかかるものがありました(写真はディズニーではなく、北京石景山游楽園の様子をネット上から拝借)。

これは、人気アトラクションの「美女と野獣”魔法のものがたり”」と「ソアリン:ファンタスティック・フライト」に2000円を払うことで、希望時間にすぐにアトラクションを楽しむことができるサービスです。

ディズニーの人気のアトラクションは、待ち時間が数時間以上になる時間帯があり、アトラクションを楽しめないという問題があり、それを解決できるというものです。

「ファストパス」や「スタンバイパス」といった従来の優先入場サービスは、無料だったようですが、今回は1人2,000円ですから、家族4人なら1回で8,000円になります。入場料に追加でかかる費用ですから、多くの人たちにとっては、簡単に出せる金額ではありません。

通常、このような有料のサービスを導入して、収益向上につなげようとすれば、「金持ち優遇」「子供が多い家族に配慮すべき」といった身勝手な批判がでる可能性があります。ディズニーのようなビジネスでは、イメージダウンを恐れて導入しにくい内容です。

しかし、今回は長時間の行列はコロナ禍では望ましいものではないという世の中の空気を逆手に取れます。

今まで通り並んでいる人には、実は何の感染対策にもなりません。有料サービスを使う人だけが感染リスクを下げられるという差別的なサービスですが、ナゼか今回あまり大きな反発は見られません。

これは、もしかしたら日本人の意識が変わったのかもしれません。お金を払って高いサービスを受けることへのアレルギーの低下です。

例えば、飛行機にはクラスによるサービスの違いや、優先搭乗などが当たり前のように存在します。

均一な平等社会と言われていた日本も、経済格差が広がり、個人の価値観も多様化しています。画一化したサービスを提供するよりも、今回のような多様な選択肢を提供して、顧客が選択できる方が全体の満足度は上がることが予想できます。

この手の顧客セグメンテーションによる差別化サービスが、例えば飲食店のような他の業界にも広がることを期待したいと思います。

Ryosei Watanabe/iStock


編集部より:この記事は「内藤忍の公式ブログ」2022年5月14日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。

資産デザイン研究所社長
1964年生まれ。東京大学経済学部卒業後、住友信託銀行に入社。1999年に株式会社マネックス(現マネックス証券株式会社)の創業に参加。同社は、東証一部上場企業となる。その後、マネックス・オルタナティブ・インベストメンツ株式会社代表取締役社長、株式会社マネックス・ユニバーシティ代表取締役社長を経て、2011年クレディ・スイス証券プライベート・バンキング本部ディレクターに就任。2013年、株式会社資産デザイン研究所設立。代表取締役社長に就任。一般社団法人海外資産運用教育協会設立。代表理事に就任。