グランドデザインなき日本の水際対策

アメリカ テキサス州で起きた高校生による小学校での銃乱射事件は生徒19名先生2名の命を一瞬のうちに奪い去りました。悲劇は当然、家族、学校、地域と広範囲に及びます。そんな中、27日から全米ライフル協会の総会が開催されています。批判の渦の中、協会員は我関せず、自分の身は自分で守るというスタイルを貫くのでしょう。銃がなくてはやっていけないと信じているのはドラッグ常習者と同じ発想です。アメリカは甘えと凝り固まった思想からいつ抜け出せるのでしょうか?

では今週のつぶやきをお送りします。

アメリカ株式市場、立ち位置に変化

下落が続いていたアメリカ株式市場。その原因は強烈な利上げ見込みへの尻込みとそれに伴う景気の腰折れ懸念でした。それは企業決算の見通しの悪さにつながり、ことごとく売られてきたのですが、あれっという変化はエヌビディアが水曜日引け後に発表した業績の弱気見通し。これでエヌビディアよ、お前もか、思わせた夜間取引では9%ほどの下落。ところが翌朝、プラス域で展開、金曜日もしっかり上げ、業績悪化の叩き売りの流れを払しょくしたように見えます。

もう一つはアマゾンなどハイテク企業が雇い過ぎた従業員の解雇に動き始め、抱えすぎた資産も減らす方向に流れていることです。テック関連の企業では技術者がだぶついているため、これから能力選考で切り始める、そして新規の雇い入れは絞る、この兆候が見えます。アメリカの雇用統計はそもそも入り(就業)と出(退職)が渦潮のように激しくぶつかり合っている状態で従業員側も高給厚遇につられて入ったものの全然対応できず、即退職というケースが多く見られます。

FRBの利上げ見込みも6月は0.50%上げとなるかもしれませんが、私は7月は0.25%の芽が出てきたとみています。つまり、金利は今のフォワードガイダンスほど上げられないことにFRBが気がつくとみています。インフレも3-4月がピークだったというデータが並び始めています。とすればここからは下げ過ぎたハイテク株、利上げが緩むなら金(ゴールド)の流れはあると思います。但し、原油は当面、高値維持になるとみています。

日本に行きたくても…

6月10日より水際対策の緩和を発表した岸田首相。それはそれでありがたいのですが、我々海外にいる者にとってこれほど日本が遠いとは思わなかったです。コロナの間は日本に入れず、コロナが終わったら飛行機が取れず、であります。出発地にもよるのですが、カナダ発の場合、移民国家故にアジア諸国に戻りたい滞留した人たちが動き始めています。成田とバンクーバーは1日で多い日には3便ありますが、この飛行機に乗っている人たちの7割、ひどい時には8割が成田トランジットなのです。ANAは東南アジア方面、JALはインドに行く人で占拠されている状態で成田で降りる人は「あれ、これだけ?」という感じです。

Tanaonte/iStock

もう一つ、批判の多い成田空港の検疫ですが、今回PCR検査が一部免除になることはよい話だと思います。それにしてもあの手続きの煩雑さは尋常ではありません。MYSOSというアプリに必要情報を全部入れ、その画面が緑色、つまり必要用件を満足した形にならないと入国できません。そのMYSOSは例えばワクチン証明がPDFで保存されていてもそれを一度写真に変換して登録しなくてはいけないといった技がいります。そんなこと、万人にできるのか、という話です。

なぜ、こんなことになったか、私が俯瞰する限り、日本のやり方はAdd On方式だからです。誰かがベースを作る、それに様々な関係者が「あぁ、これも足して」「あれもお願い」と追加していくのです。故に検疫実務でもアプリの設計でもそもそものグランドデザインがかき消された状態と言ってもよいのです。これは別に役所仕事だけではなく、日本の業務全般にみられる特徴で、組織同士が力の見せあいと妥協の産物を作り出したと言い切ってよいと思います。所轄に全責任を持ってやらせる勇気も度胸も器量もないのでしょうか?

本当に第3次世界大戦が起こりえるのだろうか?

私は最近、時々見かけるこの手の報道や主張に大きな疑問を持っています。私がスウェーデン、フィンランドがNATO加盟を目指すという報道に対してもしっくりこないと申し上げました。世界はロシアによるウクライナ侵攻をみて戦争はいつ何処でも吹っ掛けられるという恐怖心を煽りました。しかし、皆様もよくご存じの通り、ロシアはロシアなりのウクライナ侵攻の理由があったわけです。それは正当化などされませんが、長年引きづってきた事情がそこにあります。そしてロシアは他の国に手を出すような蛮行はしないでしょう。理由は戦力も体力もないだけではなく、それをするそもそもの理由がないからです。

戦争というのは相当の理由と経緯が必要です。いま、日本を戦争のターゲットにするほど険悪な関係を持っている国はあるのでしょうか?厳しい関係の国はあっても、あるいは外交上のいざこざはあったとしても戦争の引き金になる状態にはないとみています。台湾有事を念頭に軍事費の増額がテーブルに上がっています。しかし仮に台湾有事があった場合、私は今やっているようなドンパチ戦争はないとみています。もっと頭脳戦か洗脳戦で台湾に的を絞り込み、日本には一歩も踏み込まないとみています。なぜなら中国は台湾と協力関係を作らねばいけないからです。中国は台湾を敵にするのではなく、取り込みたいのです。

日経ビジネスにANAの元会長 大橋洋治氏が氏の幼少時代のつらい思い出をベースに「西側諸国のロシアに対する制裁一辺倒の姿勢には少し違和感も覚える。制裁には制裁で対抗されるだけ。戦禍を一刻も早く止めるには、異なるアプローチでロシアを説得する、という考え方もあっていいはずだ」とと述べています。本件は様々な考え方があります。虎ノ門ニュースを見ると一部のコメンテーターは聞くに堪えないほど煽りに煽っています。しかし我々はもう少し冷静になる必要あると思います。そして安易にアメリカの言うなりになる岸田首相への懸念の声も最近、ぽつぽつ上がってきていることは変化の兆しでもありそうです。

後記
先週末に今年初のハイキングに行ったのですが、山は完全に雪に覆われた状態でした。足元を雪用の装備にしていかなかったのもあり、登りづらく、息が上がり、苦しい登山となりました。それでもシーズン初のまともな山登りで頂上からの360度の眺望は全てを忘れさせてくれるものでした。カラダが動くって当たり前だけど幸せだよな、と思った瞬間です。私は健康第一どころか今は筋力と持久力増進を第一義にしています。すると何故か気力も精神力も充実してくるんですね。心身のバランスを維持するのは私のような年齢だからこそより考えるべきなのでしょう。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2022年5月28日の記事より転載させていただきました。

会社経営者
ブルーツリーマネージメント社 社長 
カナダで不動産ビジネスをして25年、不動産や起業実務を踏まえた上で世界の中の日本を考え、書き綴っています。ブログは365日切れ目なく経済、マネー、社会、政治など様々なトピックをズバッと斬っています。分かりやすいブログを目指しています。