「GOTOトラベル」の前にやるべきこと

日本政府はコロナ渦が落ち着いてきた中で、再び「GoToトラベル」政策を始めることを検討しているようです。

GOTOトラベル公式HPより

観光業は少しずつ需要が回復していますが、また全盛期に比べれば人出が戻ってきていない状況です。そのテコ入れのための手っ取り早い対策です。

しかし、「GoToトラベル」政策に関しては、もし以前と同じ方法でやるのであればデメリットの方が大きいと思います。

宿泊料金の割引やクーポンの支給といったメリットが観光客に付与されますが、とにかく割引特典を活用するために、無理矢理旅行に出かける人が増えます。

またクーポン券は、旅行中の県内でしか使うことができず、結局帰りの駅のコンビニで無駄なものを買わざるを得ないといったことになります。

本来の旅行の喜びを得ることができなければ、将来の需要拡大には結びつきません。単なる1度きりのバーゲンセールに終わってしまいます。

日本人に「GoToトラベル」政策を実施するのであれば、むしろ外国人の入国制限をさらに緩和し、円安で魅力的になった日本の観光地のアピールをする方が、はるかに有益です。

外国人旅行者が来日すれば、海外からのお金を国内に呼び込むことができます。日本人の間でお金のやりとりをするより、国全体でもメリットがあります。

そして、規制緩和であれば、お金をばら撒くための予算を組む必要も無く、税金を無駄遣いすることもありません。

外国人の入国に対してアレルギーを持っている日本人はまだまだいるようです。でも、今や日本人が次々と海外に出かけている状況で、外国人の入国を制限しても、国内の感染拡大防止にはほとんど意味はありません。

どのような利権が絡んでいるのか分かりませんが、私は「GoToトラベル」を再開することには反対です。


編集部より:この記事は「内藤忍の公式ブログ」2022年6月4日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。

資産デザイン研究所社長
1964年生まれ。東京大学経済学部卒業後、住友信託銀行に入社。1999年に株式会社マネックス(現マネックス証券株式会社)の創業に参加。同社は、東証一部上場企業となる。その後、マネックス・オルタナティブ・インベストメンツ株式会社代表取締役社長、株式会社マネックス・ユニバーシティ代表取締役社長を経て、2011年クレディ・スイス証券プライベート・バンキング本部ディレクターに就任。2013年、株式会社資産デザイン研究所設立。代表取締役社長に就任。一般社団法人海外資産運用教育協会設立。代表理事に就任。