日銀の黒田東彦総裁は、6日の講演で「家計の値上げ許容度も高まってきている」という見解を示しました。そこで使われた「値上げ許容度」という謎の言葉が話題となり、市場や日本国民の間にさまざまな憶測を呼んでいます。
東京大学の渡辺努教授によるアンケート結果が根拠のようです。
黒田総裁は、このアンケート調査の項目の「なじみの店でなじみの商品の値段が10%上がったときにどうするか」との質問に「他店に移る」との回答が、「昨年8月は半数以上を占めたが、今年4月では大きく減った点」に注目しているようです。
黒田日銀総裁 f9photos/iStock
また、渡辺教授によると、「新型コロナウイルスやウクライナ侵攻といった外部要因による物価上昇が、日本のインフレ予想と消費者の値上げ耐性の改善につながっている」ことが判明したそうです。
また、コロナ禍での消費の抑制で積み上がった「強制貯蓄」が家計の「値上げ許容度」の改善につながっている「可能性」もあるそうです。
日銀はこの「可能性」に賭け、金融緩和を「揺るぎなく」継続していくつもりのようです。
■
いきなりの「値上げ許容度」という新語に、専門家からは戸惑いの声が。
この発言のために円安がさらに進んでしまったのではという指摘ものあります。
円安依存になると輸出業者には追い風ですが、中長期的に見れば望ましくありません。
物価上昇に伴ってこれから賃金も上がってくという黒田総裁の見立てに対しては、疑問の声が。
新しい経済理論と家庭の生活実感、どちらが正しい政策に結びつくでしょうか。
日銀は、日本国民の財産で米国市場を救済しているという厳しい指摘もあります。
こうして日銀は世界最大の流動性の供給源になりました。望むと望まざるとにかかわらず、これからは日本人の自助の割合は高まっていくのかもしれません。