韓国の2021年度の合計特殊出生率が世界最低の0.81になったのは、なぜなのか?どのような対応をしているのか?
外務省の友人に勧められて、『韓国社会の現在』(2020年8月 春木育美著 中公新書)を拝読しました。
なぜ少子化が進むかと言えば、未婚化、晩婚化、そして結婚家庭における子供の数の少なさが重なりあう。韓国女性政策研究所(2019年)の調査では、64.0%の女性が「結婚に負担を感じる」という。(同調査で日本は32.0%)
韓国政府も、もちろん手をこまねていたわけではない。保育園の無償化、週上限52時間労働、男性の育児休暇の促進と育児休業給付の大幅の引き上げなどを行ってきた。
しかし、保育園の無償化は、保育園の質の低下と新たな格差を生み出し、週上限52時間労働は従業員300人以上の企業(国全体の従業員の12%)に限定され、効果が限定的だったという。
そもそも、韓国では、職業による階層意識が諸外国と比べても明確なため、(日本と韓国のキッザニアには、体験できる職業に顕著な違いが見られる。日本で子供に人気のお花屋さん、消防士さんなどは、韓国では年収が低いという理由で敬遠されるという。)
より年収が高い、より良いと言われている職業に就かせられるよう、超学歴社会の中で、小学生に複数の習い事をさせるのが当たり前になっていて、それが保護者の重たい経済的負担になっているが、
そこに対して、多様な職業キャリアを認める、中小企業の従業員の所得や福利を向上させる、小学生の習い事の費用を軽減するなどのアプローチはほとんど取られていないという。
したがって、多くの女性にとって、結婚や子育てに対する意識はネガティブなものが多く、出生率も下がり続けているという。
日本も出生率がなかなか上がらないが、韓国の取組や現状を分析して、これ以上下げない、上げていくことが大切だと思う。
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編集部より:この記事は、井上貴至氏のブログ 2022年6月12日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は井上氏のブログ『井上貴至の地域づくりは楽しい』をご覧ください。