米5月小売売上高は0.3%減、実質ベースでは1.2%減に下げ幅拡大

米5月小売売上高は前月比0.3%減と、市場予想の0.2%増に反し減少した。前月の0.7%増(0.9%増から下方修正)から、5ヵ月ぶりに減少に反転。年初来で初のマイナスとなったほか、過去10ヵ月間で、2回目のマイナスとなる。

自動車とガソリンを除いた場合は0.1%増と、前月の0.8%増(1.0%増から下方修正)を含め3ヵ月連続で増加。国内総生産(GDP)の個人消費のうち約4分の1を占めるコントロール小売売上高(自動車、燃料、建築材、外食などを除く)は市場予想の0.5%増に反し横ばいにとどまった。前月の0.5%増(1.0%増から下方修正)を含めた増加トレンドを4ヵ月で止めた。

チャート:米5月小売売上高、前月比で過去10ヵ月間で8回目のマイナスに

(作成:My Big Apple NY)

内訳をみると、主要13カテゴリー中、前月比で7種が増加し、前月の速報値ベースの9種を下回った。最も力強い伸びを示したガソリンで、次いで食料・飲料、外食と価格そのものや賃金上乗せによって押し上げられた。一方で、米5月新車販売台数が振るわず、自動車・部品が大幅に落ち込んだほか電気製品、雑貨、無店舗が弱かった。費目別の詳細は、以下の通り。

(プラス項目)

・ガソリン・スタンド→4.0%増>前月は1.9%減と3ヵ月ぶりに減少、6ヵ月平均は3.1%増
・食品/飲料→1.2%増>前月は0.1%減、6ヵ月平均は0.5%増
・外食→0.7%増、4ヵ月連続で増加<前月は2.5%増、6ヵ月平均は1.3%増

・スポーツ用品/書籍/趣味→0.4%増>前月は0.2%減と3ヵ月ぶりに減少、6ヵ月平均は0.2%減
・建築材/園芸→0.2%増>前月は0.1%減と9ヵ月ぶりに減少、6ヵ月平均は0.7%増
・服飾→0.1%増、4ヵ月連続で増加<前月は0.5%増、6ヵ月平均は0.4%増
・一般小売→0.1%増、3ヵ月連続で増加<前月は0.5%減、6ヵ月平均は横ばい(百貨店は1.1%増、過去4ヵ月間で3回目の増加>前月は横ばい、6ヵ月平均は0.2%増)

(マイナス項目)

・自動車/部品→3.5%減<前月1.8%増、6ヵ月平均は0.4%増
・電気製品→1.3%減、5ヵ月ぶりに減少<前月は1.8%増、6ヵ月平均は1.1%増
・雑貨→1.1%減、5ヵ月ぶりに減少<前月は2.1%増、6ヵ月平均は1.4%増

・無店舗(オンライン含む)→1.0%減、5ヵ月ぶりに減少<前月は1.0%増、6ヵ月平均は0.5%増
・家具→0.9%減<前月は1.6%増、6ヵ月平均は0.1%増
・ヘルスケア→0.2%減、3ヵ月ぶりに減少<前月は0.8%増、6ヵ月平均は0.1%増

チャート;米5月小売売上高、前月比のカテゴリー別

(作成:My Big Apple NY)

小売売上高の前年同月比は8.1%増と、前月の7.8%増(速報値から下方修正)を上回った。

チャート:前年比は、追加景気刺激策の反動で21年2月以来の低い伸びだった3月を引き続き上回るも伸びは限定的

(作成:My Big Apple NY)

チャート:5月小売売上高、費目別の20年2月比

(作成:My Big Apple NY)

――小売売上高はこれまで好調でしたが、4月時点でお伝えしたように貯蓄率の低下に加え、ガソリン価格や食品など生活必需品の値上げが響き裁量消費の余地が縮小、5ヵ月ぶりに減少しました。クレジットカードでの債務拡大も、冷や水となったことでしょう。また、こちらで指摘しましたように外食が4ヵ月連続で増加するなど、モノ消費からコト消費へのシフトを引き続き確認しています。

実質ベースでの小売売上高は前月比1.2%減とこちらも5ヵ月ぶりに減少しただけでなく、年初来で2回目のマイナスとなった。下げ幅は21年7月以来で最大でした。

(作成:My Big Apple NY)

6月ベージュブックで確認したように、米利上げの下押し効果や景気後退懸念が強まり始めました。さらにFedの75bpを始めとした積極的利上げと量的引き締め効果(QT)もあり、個人消費には逆風が吹きつける状況。テクノロジー企業やフィンテック、さらにはメディア大手ワーナー・ブラザーズ・ディスカバリーまで人員削減を発表し、裾野が広がりつつあります。小売売上高が年初のような好調なペースを維持する期待は、剥落しつつあります。

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編集部より:この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE – NEW YORK –」2022年6月15日の記事より転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE – NEW YORK –をご覧ください。