航空会社が抱える「空港ラウンジ問題」

内藤 忍

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サンフランシスコ行きのフライトに乗るために、羽田空港の第3ターミナルに来ました。

私は赤組なので、今回も日本航空です。

フライトマニアの間では知られていることですが、羽田空港国際線の日本航空のサクララウンジ(ビジネスクラス用ラウンジ)が工事中で、ビジネスクラス客もファーストクラスラウンジを利用できるようになっています。

この2つは、同じJALのラウンジでも大きな違いがあります。ファーストクラスラウンジでは、お寿司のお好み注文(写真)や、和食のお弁当、名物のカレーなど、好きなものを好きなだけ注文して食べることができます。一方のサクララウンジは、軽食とドリンクだけの簡易なサービスです。

このサクララウンジは、ビジネスクラスの搭乗で利用できますが、問題は一旦上顧客としてステータスを獲得してしまうと、永久に利用できる権利が発生してしまうことです。

現役時代に会社の出張でビジネスクラス利用を繰り返したサラリーマンリタイア組が、シニアになってエコノミークラスで旅行をする場合でも、サクララウンジを使うことができるのです。

そんな永久会員がどんどん増えて、その結果サクララウンジを使う人はどんどん膨らみ、時間帯によっては、席が取れない位の混雑となっています。

これは日本航空だけではなく、他の航空会社も同じ状況です。

このまま更に利用客が増えていくと、ラウンジの利用価値がどんどん小さくなっていきます。また航空会社もコスト削減のために、サクララウンジのようなビジネスクラス対象のサービスを低下させていく可能性があります。

過去に利用したというだけで、現在の収益に貢献しない顧客を永遠に優遇する。これは正直避けたいところだと思います。

しかし、一旦決めたルールを改悪するのは極めて困難です。もし、ラウンジの利用ルールを変更して永久利用できなくなれば、高齢の顧客から凄まじいクレームを受けることになるでしょう。

この増え続けるビジネスラウンジ利用客と、サービスとのバランスをどうするのか?航空会社にとって悩ましい問題だと思います。


編集部より:この記事は「内藤忍の公式ブログ」2022年6月19日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。

資産デザイン研究所社長
1964年生まれ。東京大学経済学部卒業後、住友信託銀行に入社。1999年に株式会社マネックス(現マネックス証券株式会社)の創業に参加。同社は、東証一部上場企業となる。その後、マネックス・オルタナティブ・インベストメンツ株式会社代表取締役社長、株式会社マネックス・ユニバーシティ代表取締役社長を経て、2011年クレディ・スイス証券プライベート・バンキング本部ディレクターに就任。2013年、株式会社資産デザイン研究所設立。代表取締役社長に就任。一般社団法人海外資産運用教育協会設立。代表理事に就任。