「消費税を減税して法人税を上げろ」という話がいまだに出てくるので、2022年6月19日の記事を再掲します。
これは高市氏が正しい。れいわがいつも言っている次の話は嘘である。
この図でもわかるように、1990年度の税収は60.1兆円だが、2020年度は63.5兆円と、30年間で3兆円しか増えていない。つまり90年代以降の税制改革は税収に中立だった。
「反緊縮」派のいうのとは逆に、日本はこの30年、増税しないで支出増を国債でまかなう放漫財政を続けてきたのだ。
そのうち世界的にみて高い法人税を下げることは至上命令だった。もし法人税が1990年の40%のままだったら、台湾やシンガポールの3倍。製造業の空洞化が進んで、日本経済は壊滅していただろう。
しかも法人税の減税6.1兆円より、消費税の増税17.1兆円のほうがはるかに大きい。それは法人税では説明がつかないのだ。残りの11兆円はどこへ行ったのだろうか。
消費税は「社会保障の赤字の穴埋め」
それは一般会計だけを見ていてはわからない。小黒一正氏も示すように、この30年で社会保障給付は40兆円から140兆円に増え、今後も激増する。そのうち社会保障特別会計の赤字を一般会計(公費)で穴埋めしている分が、今年度は36兆円だ。
それに対して消費税収は22兆円。つまり消費税が増税された最大の理由は、激増する社会保障の赤字の穴埋めだが、全額を使っても穴は埋めきれない。それが「消費税が社会保障にすべて使われている」という意味である。
ただし目的税というのは擬制である。厳密な意味で使途が制限されているのは特別会計だけで、一般会計の財源は何に使ってもいいので、消費税が何に使われるかという議論には意味がない。税で社会保険料の不足を埋めているので、消費税がなかったら、サラリーマンの払う社会保険料は4割以上になるだろう。
今後の税制改革でも重要な問題は、この増え続ける社会保障の赤字を何でまかなうかである。今までは赤字の穴埋めを消費税と国債でやってきたが、ここにきて日銀の財政ファイナンスにも限界が見え、国債の増発は危険だ。今後、利払いが増えることも避けられない。今は「積極財政」などと言っている場合ではないのだ。
そうすると残る選択肢は、間接税の増税しかない。消費税が政治的にむずかしいなら、岸田首相も最近いい始めたカーボンプライシング(炭素税)でもいい。高齢者も赤字法人も負担する公平な税で、広く薄く負担することが望ましい。