僅か20年で豊かだった国家を潰した二人の大統領

今月、次期大統領に選ばれたコロンビアのグスタボ・ペトロ氏が師と仰ぐのが、ベネズエラのチャベス前大統領だ。しかし彼は、後継者のマドゥロ現大統領と一緒になって僅か20年で国家を破綻させた人物だ。これからコロンビアがベネズエラと同じ道を歩まないように国内からも厳しい目が注がれている。

悪政20年で国家は崩壊

そのベネズエラであるが、経済的に豊かな国だったのを僅か20年で95%の国民が貧困に喘ぐ国にさせてしまったという前代未聞の悪政をやった二人だ。

社会の貧困をなくすというのがチャベス氏の謳い文句だった。それがボリバル社会主義革命というやつである。ところが、彼のやったことは貧困者の撲滅どころか、逆に貧困者を増やしてしまったのである。そして、彼の政治を踏襲したのがマドゥロ氏だ。

この二人の悪政によって人口2800万人のベネズエラからこれまで600万人が食糧難などから国を去った。職に就いている人は760万人で、810万人が失業者だ。職に就いていてもその60%近くは極貧困者である。人口の僅か10%が生活苦から逃れることができているという。或いは富裕者となっている。

給与は平均して38ドル。ハイパーインフレの国で、レストランで食事をするには23カ月分の給料が必要。

5歳未満の60万人の子供が慢性的に栄養失調の状態にある。ベネズエラで原油価格の下落が始まってから経済危機に陥って以来、食事をするにも事欠くようになってからベネズエラ人は平均して体重が11キロ以上減っているという(5月13日付「リブレメルカド」から引用)。

国家指導者の私腹を肥やしたのがボリバル革命だ

ベネズエラの経済は原油の輸出に完全に依存していたことで2008年頃からその価格が大幅に下落。それ以来、ベネズエラ経済は回復していない。何しろ、国内の産業化を一向に図ってこなかったからである。それまで高値だった原油で挙げた利益は指導者層の私腹を肥やすことなどに充てられた。産業の発展を図るための投資はなし。

即ち、ボリバル社会主義革命は指導者の私腹を肥やし、近隣諸国に安価な原油を供給して反米組織を構築する。また貧困層に食料を支給し、貧困者も学校教育を受けることができるようにした。これらがチャベスが唱えたボリバル社会主義革命だった。

そして、その一環として企業の国営化を図った。チャベス氏にとって民間企業は経営者の私腹を肥やす手段でしかなかった。だから機会あるごとに民間企業を押収して国営化した。そうすることによって、市民に働く場所を提供することにした。

しかし、その経営は杜撰でチャベス氏に忠実な軍人らを経営のトップに据えていた。

企業経営でやってはいけないことを取り入れていたチャベス

2007年から2012年の間に食品関係では26の企業を国営化した。民間企業を国営化した具体例として以下のような企業がある。

コーヒーの生産企業ファマ・デ・アメリカとカフェー・マドリードの17の生産拠点の中で11拠点を政府が管理することにした。前者は2009年に国営化した時の生産量は1万8600トンだった。それが2015年には僅か2500トンを生産するだけになった。

砂糖の生産企業だと国営化されてから生産量は90%下降。

アイスクリーム企業コペリャを2012年に創設して日毎2万6000トンのアイスクリームを生産すると謳っていた。ところが、僅か2週間で工場を閉鎖した。

マドゥロ大統領の代になって停電が頻繁に発生するようになっているのも改善の為の設備投資がまったくされていなかったからである。

要するに、国営化することによってチャベス氏はそこで生産されたものが十分に市民に行き渡るとした。しかし、彼には生産効率を維持するための必要条件などは全く理解していなかったということである

経営者に抜擢されたのは常にチャベス氏への忠実度合いに依存し、経営のノウハウについての経験のない人物が常に選ばれる傾向にあった。国営企業ということで赤字は政府が補填していた。従業員は政治的コネで採用されていた。即ち、企業を経営して行くのにやってはいけないことを逆にすべて取り入れていたということなのである。

最近、マドゥロ大統領はこの悪循環から脱出する必要性を切に感じるようになったのか、5月に入って国営企業の株5%から10%を売却することを発表した。これによって、民間企業から資金を集め徐々に民営化して行く姿勢を固めたい意向だ(5月12日付「パナム・ポスト」から引用)。