ピンチで人生終わる人、チャンスに変える人

黒坂岳央です。

「人生山あり谷あり」という言葉がある。カビのつく言い尽くされたこのフレーズには、誰にでも当てはまる深い本質が含まれている。どんな大成功者にも等しくピンチは訪れるし、その逆に一見、救いようがないような人にでも実は数多くのチャンスは到来している。そして面白いことにチャンスは常に「仮面」を被って現れるため、どれだけその局面で仮面の下のチャンスの女神を見抜けるかが重要である。

ピンチが訪れた時、そのピンチのままに崩れ落ちる人がいる一方で、チャンスに変える人もいる。この差は一体どこにあるだろうか?結論を最初に言えば「リターン・リスクマネジメント力」にあると考える。

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ピンチで人生終わる人

人生が終わるような大失敗をする人の共通点を大雑把にまとめると、「リスクマネジメント力の欠如」に尽きる。そして往々にして本来は何でもないような状況を、自らの失策によって大きいなピンチに変えてしまっているケースはとても多い。

たとえば飲酒運転などはその典型例だろう。飲酒運転で捕まった人は身近にそれなりにいるが、彼らの話を聞くと捕まらないための数多くの回避できるチャンスがあったように感じる。家を出る時に「今夜は酒を飲むからタクシーでいこう」「代行運転の連絡先を予め控えておこう」「アルコール飲料を飲まない」など方法はいくらでもある。

そもそも、代行運転のわずかなコストと、捕まって失う甚大なコストを冷静に計算する力があれば、どう考えても後者の選択肢を取るべきではないことは自明である。リスクリワードが悪すぎるからだ。だが「自分は運がいいから、きっと大丈夫”だろう”」という希望的観測だけでハンドルを握り、そして捕まる人は後を絶たない。

建設業など、車の運転が業務に直結する人はこれで人生がひっくり返るほどのピンチに陥るし、著名人なら社会的信用が終わる。それでも飲酒運転がなくならない理由は、彼らのリスクマネジメント力が決定的に欠けているからだ。

また、パワハラ、セクハラで捕まる事例も同様である。「まさか相手は訴えてこない”だろう”」というリスクの算出を見誤ることで、彼らは自ら人生を棒に振る。

つまるところ、リスクマネジメントにおいて重要なことは、あらゆる選択肢の可能性を考えることである。物事の未来予測は誰にとっても不可能なのだから、リスク・リターンの両方の選択肢を天秤にかけた上で、意思決定する力が必要になる。そうでなければ、長い人生を歩む中で、必ずどこかで大きなリスクを取った代償を払うことになるだろう。

危機的状況下でも同様である。ピンチを脱しようと過剰なリスクを取ってますます泥沼に陥る人はとても多い。たとえば素人が投資の短期トレードに手を出し、小さな損失を取り戻そうと大きな勝負をかけて再起不能に敗北を喫する人はどれだけ出てきたか。

ピンチで人生が終わらないためには、リスクリターンにおける計算能力を持つ必要があるだろう。

ピンチで人生逆転する人

その逆にピンチをチャンスに変えられる人は、このリスク・リターンのマネジメント力に優れていると感じる。

書籍などでよく読むエピソードに、「会社が傾くような危機的状況下で、伸るか反るかまったく新しい施策に挑戦したことが大ヒット。旧態依然としたビジネスモデルからの脱却に成功する」というものがよくある。こうした状況において、目の前にある選択肢は大抵の場合「既存モデルでジリ貧になるか?リスクを取って新規に挑戦するか?」である。

この具体例をいうなら、アップル社が当てはまるだろう。同社は一時期、経営不振に陥った。その後、スティーブ・ジョブズ氏が戻ってきた時に、売れ筋のプロダクトにしぼりこんで大勝負に出た。その後、iPhoneを生み出して奇跡の大復活を遂げている。

会社が潰れるかどうかの瀬戸際においては、ある意味で新しいチャレンジのチャンスでもある。成功すれば大きなリターンが得られるのに対し、何もしなくても失敗してもどっち道、会社は潰れるからだ。このようにリスクリワードが高い局面は、積極的に挑戦するべきだ。ピンチの時に人生逆転する人は、この算段がうまいと感じる。

人生はピンチとチャンスの連続である。そして往々にして、意思決定は瞬間的に求められる事も多い。一瞬でリスク・リターンの計算をした上で複数の選択肢から状況に応じた最適解を選ぶ力が必要だ。

ピンチを危機として受け入れるか? チャンスにひっくり返すか? 多くの場合、このリスク・リターンのマネジメント力に託されているだろう。

 

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ビジネスジャーナリスト
シカゴの大学へ留学し会計学を学ぶ。大学卒業後、ブルームバーグLP、セブン&アイ、コカ・コーラボトラーズジャパン勤務を経て独立。フルーツギフトのビジネスに乗り出し、「高級フルーツギフト水菓子 肥後庵」を運営。経営者や医師などエグゼクティブの顧客にも利用されている。本業の傍ら、ビジネスジャーナリストとしても情報発信中。