新型コロナワクチン接種後の死亡例は漏れなく報告されているか?

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わが国における新型コロナウイルスワクチン接種後の死亡報告数は、昨年2月17日から今年の5月27日までの1年3ヶ月間に、1,725件に達している。ワクチンの安全性評価や接種の是非を判断する目的で副反応疑い報告制度が存在するが、1,725件はこの制度に則って報告された数である。

医師または医療機関の開設者は、報告の対象となる症状の発生を知った場合は、予防接種法第12条に基づき医薬品医療機器総合機構(PMDA)に報告することが義務付けられている。この制度は新型コロナウイルスワクチンのみならず、その他のワクチンにも適用される。

ちなみに、2019年に5,650万回接種されたインフルエンザワクチン接種後の死亡報告件数が6件であったことを考慮すると、新型コロナワクチン接種後の1,700件を上回る死亡報告件数の異常さがよくわかる。

その上、新型コロナワクチン接種後の死亡例が漏れなく報告されているかについても疑問がもたれている。実際、ワクチン接種翌日に死亡した男性について、担当医は因果関係がないとして、PMDAへの報告を見送ったが、遺族の意向を受けて急きょ報告されたケースがニュースになっている。遺族が報告を希望しても、病院が取り合ってくれないという訴えは、SNS上には溢れている。

曖昧な新型コロナワクチン副反応疑いの報告基準

現在わが国で接種されているワクチンについては副反応疑いの報告基準として、症状や発生までの時間が定められている。インフルエンザを例にすると、脳炎や脳症、ギランバレー症候群など10種類あまりの疾患が、ワクチン接種後28日以内に発生した場合を報告の対象としている。

新型コロナワクチンについては、医師が予防接種との関連性が高いと認める症状であって、入院治療を必要とするもの、死亡、身体機能の障害に至るもの又は死亡もしくは身体機能障害に至る恐れのあるものと記載されている。

期間も予防接種との関連性が高いと医師が認める期間となっており、他のワクチンと比較して報告する基準が曖昧である。担当医の判断が重視されており、医師が予防接種との関連性が低いと判断すれば報告する必要がない。それが、SNS上に溢れている怨嗟の一因となっている。

医療機関からの報告は、PMDAで情報の整理と必要な調査を行い、その調査結果を厚生科学審議会・副反応検討部会へ報告される。検討部会は9人の委員で構成されており、PMDAからの報告を評価することになっている。

ワクチン接種後の死亡として報告された1,725例のうち、ワクチンと死亡との因果関係が否定できないと判定されたケースは一例もなく、99%は情報不足でワクチンと死亡との因果関係が評価できないとして判定を受けている。この点については、先に投稿した下記記事を参照していただきたい。

コロナワクチン接種後の死亡事例はなぜ因果関係が立証されないのか①
厚生科学審議会へ資料として提出される新型コロナワクチン接種後の死亡事例は、2022年5月13日の時点で総計1690件に達する。このうち、予防接種・ワクチン分科会副反応検討部会でワクチン接種との因果関係がありと判定された事例は1例もなく、99...
コロナワクチン接種後の死亡事例はなぜ因果関係が立証されないのか②
厚生科学審議会へ資料として提出される新型コロナワクチン接種後の死亡報告事例は、2022年の5月13日の時点で総計1690件に達する。このうち、検討部会でワクチン接種と因果関係がありとされた事例は1例も見られず、99%を占める1680...

今回の課題を検証するには以下の3つの方法が考えられる。

  1. ワクチン接種後の死亡数の推定
  2. 超過死亡
  3. 海外との比較

1. ワクチン接種後の死亡数の推定

ワクチン接種後の死亡数を推定するために、ワクチン接種後10日間の死亡推定数に対する実際の死亡報告数の割合を算出してみた。

コロナが流行する以前の2019年4月から10月における65歳以上の死亡数は651,344人である。65歳以上の人口のうちワクチン接種者の占める割合は、33,603,148 ÷ 35,767,994=0.94である。また、半年間のうち10日間の占める割合は、10 ÷ 180 =0.056である。それ故、10日間における死亡数は、651.344 × 0.94 × 0.056=34,287人となる。

ワクチン接種後10日間における65歳以上の死亡数は790人なので、ワクチン接種後10日間の死亡推定数に対する実際の報告数の割合は790 ÷ 34,287=0.023である。わが国におけるワクチン接種後死亡報告数は1,725人なので、1,725 ÷ 0.023から、今年の5月27日までのワクチン接種後10日間における死亡数は75,000人と推定される。

図1に示すように、ワクチン接種後の死亡は、接種直後の10日間に集積している。この集積については、ワクチン接種直後の死亡は、医療機関や家族も報告するが、時間が経つにつれ報告しなくなるのでこのようなパターンになるとも考えられ、この現象は報告バイアスと名付けられている。

この点について鈴村氏は、コロナワクチン接種直後9日間の死亡例については、報告バイアスの関与は考えにくいことを考察している。図1で、赤枠で示す70%がワクチン関連、残りの30%が偶発的死亡と考えるとワクチン関連死亡数は52,000人と推定される。

図1 コロナワクチン接種日と死亡数

2. 超過死亡

わが国は昨年来、戦後最大と言われる超過死亡を経験し、昨年の4月から今年の2月までの予測死亡数を上回る死者は72,000人に達している。

その要因として、これまで主に議論されてきたのは、

  1. 新型コロナウイルス感染の流行、
  2. 流行にともなう医療の逼迫、
  3. 2020年にみられた過小死亡への反動、
  4. コロナワクチン関連死

の4点である。

超過死亡の見られた時期は、コロナ流行の第4波・第5波、第6波と一致しており、さらに高齢者ワクチン接種の開始時期とも一致しているので、両者の複合要因と考えられることを先に投稿した論考で指摘した。実際、今年の1〜4月の愛知県における超過死亡数とコロナ感染死亡数、65歳以上の高齢者に対するワクチン接種回数との相関係数は、それぞれ、0.95、0.99と強い正の相関を示した。

この期間のコロナ感染死亡数は15,000人で、国立感染症研究所は、新型コロナウイルス感染症以外の原因による超過死亡が見られたことを報告している。超過死亡数の72,000人からコロナ感染死亡数の15,000人を引いた57,000人は不思議と上記で算出したワクチン関連死亡数の52,000人と近似している。

3. 海外との比較

海外における比較対象としては、人種的にも近く、同じ島国である台湾を選んだ。台湾のコロナ対策は国際的にも評価が高い。台湾のワクチン接種は、2021年の3月から始まり、使用製剤はモデルナ(2,130万回)、ビオンテック(1,764万回)、アストラゼネカ(1,529万回)のほか、台湾国産の高端ワクチン(285万回)製剤を使用している。

ビオンテックはファイザーと同じmRNA製剤である。高端ワクチン製剤は最近日本でも薬事承認されたノババックス製剤と同じ組み換えタンパク製剤である。

台湾では、2022年6月の時点で総計5,700万回接種されており、2回目接種率は82.8%,追加接種率は69.6%である。6月の時点でわが国の総接種回数は2億8,400万回であるが、日本の総人口(1億2,544万人)は台湾の人口(2,326万人)の5.4倍であることから、日本の2回接種率は80.8%、追加接種率は61.2%で、両国間の接種率は大きくは違わない。

表1 台湾における新型コロナワクチン接種後の死亡報告

表1には、台湾における新型コロナワクチン接種後の死亡報告を示す。

2021年の3月22日から2022年6月21日までの期間に1,501件のワクチン接種後死亡例が報告されている。病理解剖の結果が得られている308件を含む担当医の診断をもとに分類した死亡原因の内訳は、心筋梗塞などの心疾患が510件で最も多く、敗血症などの感染が235件、呼吸器疾患の195件が続く。ワクチン接種と死亡との因果関係についての記述は見つけられなかった。

台湾のワクチン接種100万回あたりの死亡報告は26.7件で、日本の6.1件と比較して4.4倍である。この差は、実際の死亡件数の差よりも、報告頻度の差を反映していると考えられる。ちなみに、台湾におけるワクチン接種後の死亡報告の件数は、コロナ感染による死亡数(5,651人)の26.6%にあたるが、日本について同様の計算をすると5.6%で両国間には大きな開きがある。

まとめ

3つの方法で、タイトルの「わが国で新型コロナワクチン接種後の死亡例は漏れなく報告されているか」という課題について検証したが、いずれの結果も、わが国では実際の死亡件数の一部しか報告されていないことを示している。この結果は、国民の多くが抱いている感覚に一致するものである。

鈴村氏が提唱するように、各市町村が把握する人口動向調査とワクチン接種記録システム(VRS)に登録されたワクチン接種記録を連結すれば、図1のようにワクチン接種日と死亡との関係が一目瞭然である。その場合は、死亡例が漏れなく登録されているので、報告バイアスを考慮する必要がない。このようなデータを発表する自治体が今後現れるのを期待する。

改めて言うまでもないが、ワクチン接種後の死亡原因の全てが、ワクチンに起因する訳ではなく、偶発的死亡も多く含まれていると考えられる。これまでのところ、わが国においてはワクチン接種後の死亡報告1,725例のうち、ワクチン接種との因果関係が認められた例はない。

6月2日までに、予防接種後健康被害救済制度を使って178件の死亡一時金の申請があったが、疾病・障害認定審査会で審査されたのは7件に過ぎず、全て保留されている。過去に審査会では、予防接種と副反応との因果関係について完全な医学的証明を求めることは事実上不可能な場合があるので、特定の事実が特定の結果を予測し得る蓋然性を証明することによって足りることとするのもやむを得ないと判断している。

具体的には、因果関係の認定基準としては、疾患の病因とワクチン接種との関連が医学的に説明可能で、かつ、ワクチン接種と疾患発生とに時間的関連性が見られ、他に明確な原因がないことを挙げている。これまで、ワクチン接種後の死亡例として報告されていないなかにも、この基準を満たす症例は数多く含まれていると考えられ、救済制度の対象は膨大な数になるかもしれない。