岸田首相が「電気代の軽減策」を打ち出しました。今のところ1世帯2000円の補助金を出すというしょぼい内容ですが、これについては国民民主党が「再エネ賦課金の徴収停止」を提案しました。2022年6月27日の記事の再掲です。
Q1. 再エネ賦課金って何ですか?
正式には「再生可能エネルギー発電促進賦課金」といいます。これは税金ではありません。太陽光や風力などの電気を電力会社が買い取るとき、卸電気料金に上乗せして買うのです。この賦課金は、みなさんのはらう電気代に上乗せされます。
Q2. なぜ電気代に上乗せするんですか?
2011年にこの制度ができたときは、再エネが火力より高く、電力会社に買ってもらえなかったので、民主党政権は再エネで発電した電気を固定価格で全量買い取ることを電力会社に義務づけたのです。
Q3. そんなことしたら、電力会社が赤字になるんじゃないですか?
そこで普通の火力発電との差額を賦課金として上乗せし、消費者からとることにしました。買い取り価格は、平地に設置するメガソーラーでキロワット時40円と決まりました。電力会社は再エネ業者から40円で買いますが、火力との差額は賦課金として上乗せして消費者からとるのです。
Q4. 再エネの原価はどれぐらいだったんですか?
調達委員会の資料によると、ドイツで平地に設置する太陽光の価格は約20円(18.76ユーロセント)でしたから、そのほぼ2倍の価格で買い取ったわけです。植田和弘委員長も「最初の3年は例外的に利潤を高める」といっていましたが、このころドイツでは全量買い取り制度は廃止されていました。
Q5. 賦課金の負担はどれぐらいですか?
民主党政権は最初「賦課金は1ヶ月にコーヒー1杯ぐらい」といっていましたが、次の請求書をみればわかるように、今は家庭用で電気代の1割以上、産業用では2割近い負担で、消費税1%以上です。日本全体では2.7兆円、2030年までに累計44兆円と推定されています。
FIT賦課金の総額(電力中研)
Q6. なぜ賦課金はそんなに高くなったのですか?
最初の3年だけ例外的な高値で買うことにしたとき、再エネ特措法(再生可能エネルギー電気の利用の促進に関する特別措置法)で運転の開始期限が決められていなかったため、申請だけして書類審査で買取価格を確定し、その権利を転売する業者がたくさん出ました。
その結果、図のように2020年度に運転開始した太陽光(20キロワット以上)のうち、58%が2014年までに申請した32円以上の案件です。一部の案件は値下げや期間短縮が行われていますが、今は原価が10円ぐらいに下がっているので、まさにボロもうけですね。
Q7. 国民民主党はどういう公約をしたんですか?
再エネ賦課金を「徴収停止」しようといっています。
Q8. そんなことできるんですか?
今の再エネ賦課金は固定価格ではなく、市場価格にプレミアムを乗せるFIPになっています。その基準価格は、大臣告示で決まっています。
賦課金=基準価格-市場価格
なので、「すべての案件の基準価格は市場価格と同一とする」という大臣告示を出せばいいのです。たとえば2012年に基準価格40円で認可をとった業者の権利を転売して、2020年度に運転開始した場合は、今年から基準価格を市場価格(10円)と同じに変更すればいい。現実に、そういう基準価格の変更は行われています。
Q9. そうすると再エネ業者の損害はどうするんですか?
国民民主党は税金(予備費)で穴埋めするといっていますが、これでは電気代が税金に置き換わるだけで国民負担は同じです。穴埋めしないで、再エネ業者が卸電力市場で売ればいいのです。
孫正義さんや小泉元首相は「再エネは原発より安い」と言っています。安い電力に補助金を出す必要はありません。電力は市場で自由に売れるので、権利侵害にはなりません。再エネ業者が行政訴訟を起こしても勝てないでしょう。
Q10. 賦課金を廃止すると電力消費が増えて電力不足がひどくなるんじゃないですか?
電力不足の原因は、供給力が足りないことではありません。火力発電所の設備はあまっており、毎年400万キロワットも廃止されています。電力会社が再エネを全量買い取るため、火力が再エネの残りの時間しか稼働できず、採算がとれなくなったからです。
だから電力消費がふえると卸電力市場の買いが増え、買い取り価格が上がって供給がふえるでしょう。再エネの全量買い取りをやめたら、火力の供給量が増えて電力不足は解決するでしょう。