経産省の「未来人材ビジョン」が賛否両論

5月に発表された経済産業省の「未来人材ビジョン」が話題になっています。豊富なデータに基づいて、日本の危機的な状況が明らかにされています。経産省は2017年の「不安な個人、立ちすくむ国家」など、定期的にスマッシュヒットを飛ばしています。

https://www.meti.go.jp/press/2022/05/20220531001/20220531001-1.pdf

この資料では、以下のようなものが問題意識としてあげられています。

  • 日本においても低スキル・高スキルの「労働市場の両極化」の兆候が確認できる。
  • 脱炭素推進のため、化石燃料関連産業の雇用は大きく減少する。
  • 生産年齢人口は、2050年には現在の2/3に減少する。
  • 外国人労働者は、2030年には日本の至る所で不足する。
  • 日本は、高度外国人から選ばれない国になっている。

そして、この厳しい現実を避けるために、雇用と教育の制度を転換すべきだという提言をしていますが、ネット上では「今さら当たり前すぎる」「気付くのが遅すぎる」「ポエムだ」という批判が多く見られます。一方で、「モヤモヤとしていた危機感の理由が分かった」「気合い入ってる」「役所のパワポなのに余白がたくさんあって革新的」といった肯定する意見も見られます。

「スタートアップから学ぶことが多いのではないか」ということですが、スタートアップを邪魔し続けたのはどこのだれでしょうか・・・。

この絶妙なバランス感覚が停滞した30年の原因ではないかという深い洞察も。

とくに日本企業の従業員エンゲージメントは世界全体でみて最低水準にあるにもかかわらず、「現在の勤務先で働き続けたい」と考える人は少なく、でも「転職や起業」の意向を持つ人も少ないと述べられている部分は、衝撃をもって読まれています。

雇用が問題と言いつつ、けっきょく解雇規制には触れず

この資料を取りまとめた経済産業政策局長・平井裕秀氏が一流ビジネス誌のプレジデントのインタビューに以下のように答えています。

一番ショックだったのは日本企業の従業員エンゲージメントは世界でも最低の水準だというデータです。

経産省がこの点に気付いたのは前進かもしれませんが、そんなものは定期的にギャラップ社が報告してくれています。

「熱意ある社員」6%のみ 日本132位、米ギャラップ調査 - 日本経済新聞
世論調査や人材コンサルティングを手掛ける米ギャラップが世界各国の企業を対象に実施した従業員のエンゲージメント(仕事への熱意度)調査によると、日本は「熱意あふれる社員」の割合が6%しかないことが分かった。米国の32%と比べて大幅に低く、調査した139カ国中132位と最下位クラスだった。企業内に諸問題を生む「周囲に不満をま...

また、

日本の大企業には、新卒で入社した人間が経営者となるケースがほとんどです。その場合、自社のカルチャーやシステムに誇りを持っているはずで、そこに踏み込んで変革を行うのは自己否定にも等しい行為です。

と、経産省・役所は自己否定しないでもいいというマイ・ルールはご愛敬でしょうか。

とりあえず、未来人材を語る前に、電気代をなんとかしてほしいと思います。